効率的なCSR調査に向けて
2005年02月22日
企業(主に株式会社)の社会的責任(CSR)の重要性を指摘する声は極めて大きなものになってきた。企業が社会的な存在であり、社会との関わりなしに存続し得ない以上、その目的遂行上も社会への一定の配慮が要求されるべきことは確かだ。それは一人一人の個人が、やはり社会的な存在であり、社会の諸規範に従うべきであるのと同じだ。その意味でCSRは、内容の曖昧さはあるものの、企業行動を規律する重要なファクターの一つであることに間違い無い。
しかし、企業にしろ、個人にしろ、その社会性を過度に強要することには、少なからぬ疑念を感じないではいられない。私たちが生活する中で、法律上・契約上何の関係も無い人から、「あなたはもっと環境保護に努めるべきだ」とか「法令遵守しているか」とか言われれば、居心地の悪さを感じ、反発を覚えないだろうか。一般的な正しさはその通りだとしても、余計なお世話だと感じてしまう人も多いと思う。
これは、企業に対するCSRの要求にもあてはまるのではないか。様々なCSR調査が各企業に対して行なわれている。そこでは、環境保護・法令遵守・従業員処遇・社会貢献など様々な事項について、大量の、そして時には趣旨不明な質問が投げかけられる。欧米から日本企業に送られてくるCSR調査の多くは、英文であり、回答にも英文を求めている。一つのアンケートに120から130の質問があり、全部に答えるには1600時間が必要との声も聞かれる。企業の中で回答にあたる職員には、「questionnaire fatigue(質問状に起因する疲労)」が生じるが、回答しなければ、CSRに鈍感な企業だと烙印を押されかねない。このため、CSR調査に対する企業の回答率はせいぜい20%程度であり、高いものでも5割くらいである。つまり、CSR調査にそっぽを向く企業が少なくないということだ。顧客でもなければ、取引先でもないし、出資者でもない誰かから、質問状を送りつけられても、答える義務を感じない企業が多いことは容易に理解できる。多忙な人が街頭でいきなりアンケート調査への協力を求められても、まったく足をとめないのと同じだ。
個々の企業に対してCSRの調査を行なおうとする調査機関の熱意や使命感には共感するところも多いが、調査対象である企業とのコミュニケーション不足があるように感じられる。調査を受ける者には、回答する自由があるのと同時に、回答しない自由もある。回答する者が、過度の負担感を受けるような設問は、回答回収率を引き下げることとなる。CSR調査の回答率を上げ、信頼性を上げるためには、企業の社会的責任感に期待するだけでなく、回答にかかる負担を軽減させる調査手法を作り上げる努力が求められる。
しかし、企業にしろ、個人にしろ、その社会性を過度に強要することには、少なからぬ疑念を感じないではいられない。私たちが生活する中で、法律上・契約上何の関係も無い人から、「あなたはもっと環境保護に努めるべきだ」とか「法令遵守しているか」とか言われれば、居心地の悪さを感じ、反発を覚えないだろうか。一般的な正しさはその通りだとしても、余計なお世話だと感じてしまう人も多いと思う。
これは、企業に対するCSRの要求にもあてはまるのではないか。様々なCSR調査が各企業に対して行なわれている。そこでは、環境保護・法令遵守・従業員処遇・社会貢献など様々な事項について、大量の、そして時には趣旨不明な質問が投げかけられる。欧米から日本企業に送られてくるCSR調査の多くは、英文であり、回答にも英文を求めている。一つのアンケートに120から130の質問があり、全部に答えるには1600時間が必要との声も聞かれる。企業の中で回答にあたる職員には、「questionnaire fatigue(質問状に起因する疲労)」が生じるが、回答しなければ、CSRに鈍感な企業だと烙印を押されかねない。このため、CSR調査に対する企業の回答率はせいぜい20%程度であり、高いものでも5割くらいである。つまり、CSR調査にそっぽを向く企業が少なくないということだ。顧客でもなければ、取引先でもないし、出資者でもない誰かから、質問状を送りつけられても、答える義務を感じない企業が多いことは容易に理解できる。多忙な人が街頭でいきなりアンケート調査への協力を求められても、まったく足をとめないのと同じだ。
個々の企業に対してCSRの調査を行なおうとする調査機関の熱意や使命感には共感するところも多いが、調査対象である企業とのコミュニケーション不足があるように感じられる。調査を受ける者には、回答する自由があるのと同時に、回答しない自由もある。回答する者が、過度の負担感を受けるような設問は、回答回収率を引き下げることとなる。CSR調査の回答率を上げ、信頼性を上げるためには、企業の社会的責任感に期待するだけでなく、回答にかかる負担を軽減させる調査手法を作り上げる努力が求められる。
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- 執筆者紹介
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政策調査部
主席研究員 鈴木 裕
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