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好かれるブッシュ 嫌われるブッシュ

2004年06月24日

経済調査部 シニアエコノミスト 近藤 智也

最大の懸案事項だった雇用環境が足元で順調に拡大し、大恐慌時のフーバー以来の“雇用を減らした大統領”というレッテルを免れそうなブッシュ大統領であるが、経済運営に対する支持率は2001年の就任以降で最低水準を記録しており、むしろ逆風になっている。昨年Q3の前期比年率8.2%の後も直近Q1まで4%超と、3%台前半とされる米国の潜在成長率(CBO試算)を上回る経済成長を達成し、今年の成長率は市場コンセンサスで4.7%と、90年代後半にも経験しなかった1984年以来の高成長が見込まれているにも拘わらず、である。最近では、スノー財務長官が「もっと政権の経済運営を評価してほしい」と嘆いている。

では、なぜブッシュ政権の経済運営、延いてはブッシュ大統領の支持率アップに結び付かないのだろうか。確かにイラク情勢(虐待問題等)やテロ対策(事前に十分な対応をしたかや、イラクとテロ組織との関係の有無等)の失点が足を引っ張っていることは事実だが、世論調査から次のような特徴が指摘できる(以下の数字は、Gallup社調査に基づく)。

再選を目指す現職大統領の投票日半年前時点の支持率を比較してみると、ブッシュ大統領の支持率は47%と、ブッシュ(父)の40%、カーターの43%、トルーマンの39%を上回り、フォードと並ぶ数字になっている。但し、トルーマンを除く3人の大統領は再選に失敗した。また、共和党支持者の間では、ブッシュ大統領への支持率は89%に達しており、ブッシュ(父)の70%、レーガンの85%よりも高い。逆に、民主党支持者のなかでは12%に過ぎず、両党支持者間のギャップ(77%ポイント)は戦後の大統領では最大であるという。ブッシュ(父)が民主党支持者から受けた23%、共和党支持者のカーターやクリントンに対する支持率25%を下回っている。つまり、ブッシュ大統領は身内から絶大な人気を誇っているが、対立政党の支持者にこれほど嫌われている大統領もいないのである。

この3年半を振り返ってみれば、2000年の大統領選挙の決着が最後は司法判断に委ねられ、対立を残したままとなった。それが、9.11(同時テロ事件)により、国民の心を一つにまとめることができわけだが(事件直後の支持率は90%に急上昇)、現在の支持率は就任以来最低水準に落ち込んでおり、貯金を食いつぶした格好である。ブッシュには世論をまとめるチャンスが与えられたにもかかわらず、逆に、過去にないレベルまで二極化を進めてしまった。この意味では、彼が経済政策の柱とした大型減税措置は、景気浮揚効果はあったものの、富める者が益々豊かになる状況、あるいは持つ者と持たざる者が乖離するという状況を生み出したといえよう。

ブッシュ大統領のようにリセッションを経験した大統領としては、レーガンとブッシュ(父)という二人の共和党政権が挙げられる。前者が2期8年を務めて先日偉大な大統領として国葬が執り行われたのに対して、後者は再選に失敗してしまった。レーガン元大統領の場合、ソビエトを“悪の帝国”と呼び国防費を大幅に増やした一方、レーガノミックスと呼ばれる減税等の経済政策を実施した。結果として双子の赤字(財政赤字・経常赤字)を抱えたが、米ソ冷戦構造の終焉に道筋をつけ、90年代の好景気の端緒になったとも評価されている。在任当時の支持率は決して高い方ではなかったが、戦後の大統領のなかで誰が最も偉大かという質問ではケネディに次ぐ支持を集めている。“悪の枢軸”と名指ししたイラクのフセイン政権を打倒し、レーガンを上回る規模の減税を実施したブッシュ大統領は、果たして父親の二の舞を演ずるのか、それともレーガン元大統領のように引退後も慕われる機会を得るのか。審判の日まであと5ヶ月足らずである。

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近藤 智也

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