2017年07月07日
サマリー
◆日本銀行(以下、日銀)から2017年1-3月期の資金循環統計(速報)が公表された。前期(2016年10-12月期)までは株高・円安を背景に、全般に金融資産残高が増加した主体が多かったが、今期は金利上昇や円高進行等の影響により、多くの主体で減少に転じた。
◆家計の金融資産残高は、定期性預金からの資金純流出を主因に減少した。一方で、流動性預金や株式等、投資信託、国債等への資金純流入が見られた。
◆預金取扱機関(銀行等)は、これまでと同様に国債の売却を進めているが、その売却代金が日銀当座預金として積み上がる状況が続いている。また、対外証券投資は、海外の金利上昇を背景に売り越しとなったとみられる。
◆生命保険の金融資産残高は、金利上昇による国内債券の時価下落、円高進行による対外証券投資の評価減を主な要因に減少した。円高による評価減となったものの対外証券投資は買い越しであり、引き続き対外証券投資に積極的な様子が見られる。
◆年金の金融資産残高は増加した。公的年金の残高は増加したが、小幅ながらリスク資産からの資金流出が見られ、ポートフォリオの再構築は一服した可能性もある。企業年金の残高は減少し、対外証券投資はフローがプラスだったが、円高により残高は減少した。
◆事業法人(民間非金融法人企業)の金融資産残高は大きく増加した。主因は現金・預金の増加で、現金・預金残高は過去最高となった。企業の海外展開は引き続き活発であり、対外直接投資の残高も増えている。資金調達側を見ると、借入や事業債による資金調達を増やしており、長期化する低金利を背景に、資金調達が積極的に行われたようだ。
◆海外部門の金融資産残高は、貸出残高や株式等の減少により大幅に減少した。特に、貸出においては、現先・債券貸借取引の資金流出超が主な要因となっている。国債へは資金純流入が見られた。
【「なるほど金融」の「おカネはどこから来てどこに行くのか 資金循環統計の読み方」もご参照ください。】
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
資金循環統計(2016年10-12月期)
株は売り越しが大半だが、株高と円安で残高増加
2017年03月28日
-
資金循環統計(2016年7-9月期)
生保による対外証券投資は3期連続で過去最高の買い越し額を記録
2016年12月26日
-
資金循環統計(2016年4-6月期)
主体により異なるマイナス金利政策導入の効果
2016年09月29日
-
マイナス金利政策が導入された今期、どのような影響が表れたか?
資金循環統計(2016年1-3月期)
2016年06月27日
-
資金循環統計(2015年10-12月期)
今期から2008SNAを踏まえた見直し後の新ベースで公表
2016年04月22日
-
リスク資産、株安で残高減も資金流入は継続
資金循環統計(2015年7-9月期)
2015年12月21日
-
家計や企業の金融資産残高が過去最高を更新
資金循環統計(2015年4-6月期)
2015年09月24日
-
家計によるリスク資産への投資が増加
資金循環統計(2015年1-3月期)
2015年07月01日
-
資金循環統計(2017年4-6月期)
株価の上昇が金融資産残高の増加に寄与
2017年10月02日
-
2016年末からの投資信託保有動向の変化
設定額・解約額の増加、毎月分配型・海外REIT型からの資金流出
2017年08月03日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
FISC、「金融機関によるAIの業務への利活用に関する安全対策の観点からの考察」の公表
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月17日
-
IoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度『JC-STAR』の開始
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月16日
-
2025年度のPBはGDP比1~2%程度の赤字?
減税や大型補正予算編成で3%台に赤字が拡大する可能性も
2025年01月15日
-
『ICTサイバーセキュリティ政策の中期重点方針』の公表
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月15日
-
ASEAN最大のグローバルサウス・インドネシアのBRICS加盟が意味することは?
2025年01月17日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日