2025年07月03日
サマリー
◆2025年上半期に配当方針等を変更した企業は263社と、2009年以降で最も多かった(半期ベース)。2023年3月に東京証券取引所が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請したことで、資本収益性の向上や持続的な成長のための手段として、多くの上場企業が配当方針等の見直す傾向が続いている。
◆変更の内容では、目標値の引き上げ(95件)、株主資本配当率(DOE)の採用(60件)、累進配当の導入(52件)が目立った。DOEと累進配当は、2023年上半期以降、徐々に採用する企業が増えている。
◆配当方針等の変更の開示は株式市場で概ね好感されているものの、2022年1月以降でみると、アナウンスメント効果は若干低下した。配当方針等を変更した企業のうち、今期を減益と予想する企業の比率が、前年同時期より約1割増えたことが一因と思われる。
◆配当方針を変更し、今期の業績を減益と予想する企業では、配当性向等の目標値の引き上げや、業績連動の影響が小さいDOEや累進配当の追加採用で、半数以上が増配を予定している。2025年上半期は、このような減益・増配予想の企業の株価が底堅い。株価の反応は、開示直後で約7割、約1ヵ月後でも約6割の企業が、TOPIXを上回っている。今後の業績に対する不透明感が高まる中では、財務余力のある企業を中心に、配当性向の引き上げ、DOEや累進配当を検討する企業は増えるだろう。
◆今後は、政策保有株の売却のような一過性の要因による利益増の株主還元方針や、累進配当の場合での業績拡大時の配当引き上げ幅の考え方、累進配当を取り下げる可能性やその条件等について、開示内容が充実することが望まれる。
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