サマリー
◆2025年春闘での賃上げ率は、33年ぶりの高水準となった前年を小幅に上回っただけでなく「広がり」の面でも改善が見られた。大企業に比べて中小・零細企業の賃上げが加速しており、地方部の賃上げ率は都市部よりも高かったとみられる。2023年度までは民間企業を中心に賃上げが進んだが、2024年夏の人事院勧告を受け、2024年度は公務員給与や初任給が大幅に引き上げられた。2025年度も民間と同様に高水準の賃上げが実施されるだろう。
◆2018~24年度(年)の時給ベースの実質賃金上昇率は年率+0.6%だった。ドイツ並みの伸びだったが、生産性上昇率の違いなどを反映し、米国のそれの3分の1程度にとどまった。さらに実質賃金を1人あたりで見ると、日本は労働時間の大幅な減少により同▲0.2%に落ち込んだ。働き方改革の成果でもあり前向きに評価できる一方、就業時間の増加などを希望する若年雇用者が近年増加している。専門職への振り分けに応じた労働時間の裁量拡大や副業・兼業の促進など、就業・成長意欲の高い労働者がより働きやすく、活躍しやすい環境の整備が必要だ。
◆賃金相場の上昇や企業の賃金支払能力の向上を踏まえると、2025年度の最低賃金(最賃)は前年度の5.1%(51円)を上回る引き上げが行われる可能性がある。政府目標がどの程度考慮されるかで引き上げ幅は変わるが、引き上げ率の目安は6%(63円)程度となり得る(実現した場合の最賃は全国加重平均で1,118円程度)。2025年度の骨太方針で紹介された欧州型目標の扱いや、目安を超える最賃引き上げが行われた地域に対する国の新たな支援策の影響なども注目される。
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