AIが文章を書く時代に、企業は何を語るのか
2026年02月13日
近年、企業には経営方針や環境・社会の取り組みなど、非財務情報の開示が幅広く求められるようになった。それに伴い、企業の開示負担も増している。一方、AIの発展で、文書作成業務の効率性は飛躍的に向上している。特に定性的な内容が多い非財務情報の文章作成は、AIとの相性がよさそうだ。
試しにAIに架空の企業を想定して、有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載する、人材育成の方針(人材の多様性の確保を含む)や社内環境整備の方針と、それらに関する指標及び目標の文章作成を依頼した。数秒で“それらしい文章”が出力された。指標及び目標も、女性管理職比率や社員1人当たり研修時間、デジタル基礎研修の受講率、従業員エンゲージメントスコア、離職率といった具体的な内容が挙げられていた。
情報の利用者側である資産運用会社においても、AIを活用して統合報告書や有価証券報告書のテキスト分析に取り組む動きがある。AIが作成した各種報告書をAIが読み解く時代は、目の前に来ているのかもしれない。
そのような時代において、企業の各種報告書の作成における「人」の重要性を改めて考えたい。まず、大前提として、AIは事実に基づかない文章を作成してしまうことがあるので、内容に事実誤認がないか、人が確認する必要がある。また、AIの文章は一定水準に整っている一方で、無難な内容にまとまりがちだ。過去に学習した文章の構造などを反映しやすいことから、表現が似通うことも多い。文脈を踏まえた表現も苦手といわれている。
非財務情報の開示が幅広く求められるようになった背景には、従来の財務情報だけでは把握できない経営層の考えや企業の価値創造プロセスを知りたいというニーズが増加したことがある。今後、各種報告書の作成の過程でAIを活用する場面は確実に増えるだろう。一方で、その文章の中に企業のビジョン、組織文化、経営環境の変化に対する認識、経営戦略などを、「人」が“自社の文脈”を踏まえ、自らの言葉で盛り込んでいくことの重要性も増していくのではないか。AIが文章を書く時代だからこそ、企業が何をどのように語るのかが、これまで以上に問われるように思う。
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金融調査部
主席研究員 太田 珠美

