不適切な会計処理とガバナンス

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2026年02月06日

  • マネジメントコンサルティング部 主席コンサルタント 吉村 浩志

ここのところ、不適切な会計処理に関する報道がメディアを賑わせている。一口に「不適切な会計処理」と言っても、不正な経費処理のように資産の流用を目的とするものもあれば、売上を嵩上げするための循環取引のように不正な財務報告を目的とするものなど、その内容は様々である。前者は経営者の目が行き届かないところで生じたものであり、後者は経営者自らが加担したものと言える。

一方で、経営者自身は望んでおらず、指示もしていなかったにも関わらず、結果的に生じてしまう不適切な会計処理というのもあり得る。例えば、経営者に対する投資家・資本市場からの期待が大きく、経営者自身もそれに応えようとして、高い目標を掲げる中で、達成に対するプレッシャーから、配下の役職員が不適切な会計処理に手を染めてしまうようなケースもある。

こうしたケースが悩ましいのは、「不適切な会計処理」に経営者がどのように関わっているのか、外部からはわからないことだ。企業としては、客観性を担保するため、特別調査委員会による調査等を実施し、事件の真相を詳らかにすることとなるが、投資家・資本市場の信頼を取り戻すには多大な時間とリソースを要することになる。最終的には、投資家・資本市場に対する説明責任を果たすために、経営者が一定の責任を取ることも避けられない可能性もある。

これは決して他人事ではない。経営者は投資家・資本市場と対峙する中で、自らもプレッシャーを受けている。経営者として、対外的にコミットした目標達成に向けて、役職員に働きかけていくことは当然のことであるが、結果的に行き過ぎてしまうことはないとは言えない。経営者の姿勢や言動が、役職員に大きな影響を与えることを考えると、自らが同じ轍を踏まないようにするためには、経営者自らが自分を縛る仕組みを作ることが必要だ。コーポレートガバナンスが十分に機能することは、不適切な会計処理を防ぐという文脈では、経営者にとっても重要なセーフガードになるだろう。

どんなに優秀なドライバーでも、限度を超えたスピードでは事故を起こすことになる。事故を起こさないためには、限度を超えない仕組みを作ることが必要だ。

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マネジメントコンサルティング部

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