どうすれば地方自治体のガバナンスを強化できるか

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2026年02月04日

最近、地方自治体の首長の問題がメディアをにぎわすことが多い。その背景には、首長だけの問題ではなく、首長、住民、住民の代表である地方議会・議員、役所などの執行機関を含めた地方自治体におけるガバナンスの問題があろう。類似の言葉であるガバメントは国の統治、地方の自治そのものを意味するのに対し、ガバナンスとは、国の統治、地方自治を担う関係者がその相互作用や意思決定により、社会規範や制度を形成し、強化して、再構成していくことを意味する。

分かりやすい例としては、企業の不祥事などの予防、対策で問題となる言葉として使用される企業ガバナンスであろう。企業ガバナンスは、健全な企業経営を行うための組織管理体制、内部統制を指す。特に、組織内部において相互をけん制する意味を持つ内部統制は、企業の業務の有効性と効率性、法令順守、資産の保全を確保するための仕組みである。企業の社長は、取締役会が決定した基本方針に基づいて内部統制を実施する必要があり、加えてそれを整備・運用する最終責任者である。このため、社長自身に不祥事などの問題があれば、内部統制、ガバナンスは機能せず、健全な経営は成り立たない。この意味において、地方の首長のガバナンス上の責任は非常に重く、地方自治体の健全な運営に及ぼす影響は計り知れない。

ここで、総務省による地方公共団体のガバナンスのあり方に関する資料(※1)と地方自治法に基づき、地方自治体におけるガバナンスを整理する。地方自治体のガバナンスとは、地域住民の参加と透明性を重視し、地方公共団体の適切な運営を実現するための重要な枠組みとされている。ガバナンスの基本構造としては、住民、地方議会、執行機関(首長など)、監査機関といった、さまざまな主体が相互に関与し、チェックし合う仕組みとなっている。地方議会は住民を代表する機関であり、執行機関の行動を監視し、政策決定において重要な役割を果たしている。冒頭で述べたように、地方自治体におけるガバナンスとは、地方自治を担う関係者がその相互作用や意思決定により、社会規範や制度を形成し、強化して、再構成していく仕組みである。

ただし、企業ガバナンスは株主などのステークホルダーのためのガバナンスであるが、地方自治体のそれは異なる。住民自治が地方自治の根幹を成すことから、ここではステークホルダーである地域住民のためのガバナンスとなる。前述の総務省の資料(※1)では、「適切な役割分担によるガバナンス」が強調されており、首長、監査委員、議会、住民の役割が明確にされることが求められている。これにより、住民の意見が政策に反映されやすくなり、より良いガバナンスが実現されることが期待されている。

これらを踏まえれば、適切な地方公共団体のガバナンスを構築するために、政策に反映される「住民の意見」には、少なくとも社会規範上の高い“民度”が求められ、それが適切なガバナンスを担う首長、議会議員の選出につながると考えられよう。

最後に、本稿のテーマである「どうすれば地方自治体のガバナンスを強化できるか」に対する答えは、当然ながら全ての住民が社会規範と責任を持って主体的に地域の運営、ガバナンスに関与することであり、それ以外の答えはないのではないか。

(※1)総務省「地方公共団体のガバナンスのあり方に関する参考資料」2014年8月29日第31次地方制度調査会第6回専門小委員会 参考資料2

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内野 逸勢
執筆者紹介

金融調査部

主席研究員 内野 逸勢