「金利のある世界」で国内投資に活性化期待
2026年01月23日
昨年12月、日本銀行は政策金利の誘導目標を0.75%程度へと引き上げた。政策金利が0.5%を超えるのは1995年以来、30年ぶりとなる。また、10年国債利回りも直近で2.3%を超えてきたが、この水準は1999年以来である。
背景には、デフレからインフレへの転換、そして現政権の財政積極化路線など複数の要因が絡んでおり、当面、元の低金利水準に逆戻りする可能性は小さい。すでに「金利のない世界」から「金利のある世界」への不可逆的とも言える転換が起きたと判断すべきだろう。
一般論としては、金利が上昇すると借入コストが上昇するため、住宅投資や設備投資など経済活動は抑制される。また、金融資産投資に関しても、レバレッジを掛けづらくなるため抑制要因となる。いわゆる円キャリートレード(低い円金利で調達して外貨投資をするような投資行動)も拡大しにくくなるだろう。
しかし、今回の金利上昇をデフレから脱却した「正常化」と捉えるなら、少し異なる見方ができるのかもしれない。それは、一様に投資が抑制されるのではなく、むしろ、分野によっては、停滞していた国内投資が活性化する可能性である。
まず、日本の家計にとって、資産運用の選択肢が広がることになる。これまで日本国債など中・低リスクの円資産の利回りが低過ぎたため、株式など高リスク資産の価格変動リスクを吸収するバッファーが小さかった。ゆえに伝統的なバランス型のポートフォリオを組む魅力も高まらなかった。今後は、円資産だけでも様々なポートフォリオを組みやすくなり、結果、株式など比較的リスクの高い資産への投資も活発化する可能性が考えられる。また、金利上昇により円債投資の魅力が高まってくると、国内の社債発行市場の活性化も期待される。デフレ時代には海外に流出しがちだった投資資金が、国内にも向かいやすくなる、というシナリオも描けそうだ。
次に、企業にとってはどうか。借入コストの上昇が収益にマイナスに働くのは当然である。もっとも、企業はこの30年ほど低金利にもかかわらず傾向的に借入依存度を下げてきた。ある意味、デフレ悪循環の一つの要因とも言えるのだが、ここもとの金利正常化は、むしろ企業行動の正常化を促す可能性があるのではないか。すなわち、計画的な資金調達を行いながら、設備などへの投資活動を積極的に行う、当たり前の企業行動である。昨今、上場企業には資本コストの把握や資産の効率的な活用が求められているが、金利上昇を契機に、いっそう資本収益性に対する意識が強まることが考えられる。それは、企業の投資活動の積極化にもつながる期待が持てるのではないか。
金利上昇は、別の視点で見ると、おカネに対する需要の増加を表している。経済活動や投資活動の拡大に伴い、資金の手当てが活発になり始めている証左と捉えることもできるだろう。経済成長や生産性向上に向けて、国内投資は必要不可欠であり、その活性化に期待したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
調査本部
常務執行役員 調査本部 副本部長 保志 泰

