『確定給付型年金の再評価と日本企業への示唆』
2026年01月21日
近年、世界的に確定拠出型年金(DC)が企業年金の選択肢として存在感を高める中で、「カナダでは確定給付型年金(DB)の再評価する動きが見られる(※1)」という。これは単なる制度選択の問題ではなく、企業が従業員の退職後の安定をどのように支えるかという「人的資本経営」の視点とも深く関わっている。
カナダでは、DB年金の財政状況が改善し、近年、ソルベンシー比率(年金制度の健全性を示す指標)は過去最高水準に近づいている。年金資産の運用成績も良好であり、制度運営の安定性が高まっている。さらに、DBとDCの中間に位置づけられるターゲット・ベネフィット・プラン(TBプラン)が導入され、従来のDBの利点を活かしつつ柔軟性を持たせた仕組みが広がっている。これらの要因により、企業にとってDBの再導入が現実的な選択肢となりつつある。
DBがカナダで再評価される背景には、主に以下の三点が挙げられる。
1.金利動向や運用環境の改善によるDBの財政的持続性の向上
2.従業員の老後資金への不安の高まりと安定した給付を約束するDBに対する安心感
3.人材確保競争の激化に伴うDBによる従業員定着・エンゲージメント向上への期待
一方、日本では2000年代以降、企業年金はDBからDCへの移行が進み、企業型DCやiDeCoが普及してきた。しかし、従業員が自己責任で運用リスクを負うことへの不安は根強い。少子高齢化や長寿化に伴い、老後資金の安定性確保は大きな社会的課題となっており、DBの価値を再評価する余地がある。
カナダの企業年金の仕組みは日本とは異なる部分もあるが、DB復活の兆しは日本企業にとっても示唆的である。企業年金を単なるコストではなく、退職後の安定を支える投資と位置づけ、信頼とエンゲージメントを高めることが重要である。企業は、DBの再構築や、DBとDCを組み合わせたハイブリッド型制度の導入により、人的資本経営の強化と競争力向上が期待される。
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データアナリティクス部
主任コンサルタント 逢坂 保一

