“大寒”の時期に考える温暖化の意外な経済損失
2026年01月19日
二十四節気(にじゅうしせっき)で1年において最も寒い時期とされる“大寒”を迎える。2026年の大寒は1月20日から2月3日までの期間に当たるが、この時期は日本海側のみならず、太平洋側でも大雪による交通マヒに警戒が必要だ。
温暖化は降雪そのものを減らすイメージがあるが、一部の地域ではむしろ大雪になるリスクが高いとされる(※1)。海水温度の上昇が雪雲を発達させやすく、そこに強い寒気が入ると地上にて一気に雪が降る、いわゆるドカ雪をもたらすことにつながりやすいからだ。
新潟県などの大雪に慣れた地域では、冬はスタッドレスタイヤの装着は当然であるし、さらに除雪車が道路をひっきりなしに除雪してくれ、市街地などでは道路に埋め込まれた消雪パイプが融雪してくれる。このように降雪地帯では、大雪による交通障害を減らすインフラが整っている。一方、東京都などの都市部の車所有者がスタッドレスタイヤを履くのは必ずしも一般的ではなく、除雪・融雪のインフラも乏しいので、都市部では少しの積雪でも交通がマヒしやすい。さらには2026年の年始のニュースにもあったように、雪に慣れていない地域の人々がノーマルタイヤのままで降雪地域を走行した結果、スタックして他の車に多大な迷惑をかける例が後を絶たない。特に物流を遮断することの経済損失は大きい。2014年に福島県で大雪による3日間(2月15日-17日)の大規模な車の立ち往生(国道4号線・東北自動車道)が発生した際、国土交通省の研究者による試算ではその経済損失額は約30億円とされている(※2)。
しかしながら、スタッドレスタイヤを別途買うのは、かなりコストがかかる。一般的にはホイールもセットで購入することになるため、車種によっては4本揃えると20万円を超えることも珍しくない。さらに、その季節に使わないタイヤを自宅で保管できず、業者に保管させるのであれば、年間で2万~3万円程度の料金がかかることもある。金属製のタイヤチェーンや最近ではスノーソックス(※3)というものもあるが、それらは長距離を走行するのには向いていない。
近年は、雪道走行も可能な年中装着できるオールシーズンタイヤが市民権を得つつある。ただし、オールシーズンタイヤは路面が凍結(アイスバーン)した道路に弱いという難点がある。この難点を克服するため、最近はアイスバーンの道路でもグリップ力を高めた高機能なオールシーズンタイヤも発売されている。もちろん、2014年のような記録的豪雪などにはオールシーズンタイヤでも太刀打ちできない場合があるため、大雪の時には「運転しない」「予防的通行止めを行う」といった対策との組み合わせが重要である。しかし、温暖化で予想される大雪の経済損失の大きさを考慮すると、今後は都市部を中心にオールシーズンタイヤをデフォルト(標準装着)にして、それ以外のタイヤはオプションで選ばせる(オプト・アウトする)ことも検討に値するのではないか。
- (※2)齋藤貴賢・原野崇・大城秀彰・小俣元美[2019]「道路交通における雪対策の経済的観点からの評価の試み」『土木技術資料』平成31年3月号(Vol.61 No.3), pp.40-43. 土木研究センター
- (※3)タイヤに装着する布製のチェーンで、金属製のタイヤチェーンよりも簡単に装着できるメリットがある。
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経済調査部
主任研究員 溝端 幹雄

