MCDBで変わる診療報酬改定と経営効率化の推進

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2026年01月09日

2025年末に政府が決定した2026年度診療報酬改定率は、本体部分がプラス3.09%、薬価等がマイナス0.87%で、全体ではプラス2.22%となり、12年ぶりのプラス改定となった。これは、医療機関が質の高い医療を持続的に提供するためには、物価や賃金の上昇に対応する原資を確保する必要があるとの判断による。

しかしながら、医療機関の経営状況は一様ではないため、診療報酬の引き上げは一律ではなく、経営状況に応じたメリハリが必要である。今回の改定では、物価対応分+0.76%のうち+0.62%について、費用構造データを基に、病院+0.49%、医科診療所+0.10%、歯科診療所+0.02%、保険薬局+0.01%と配分された。さらに、高度機能医療を担う病院については、医療技術の高度化や価格競争が働きにくい医療機器の調達が物価高の影響を受けやすいことを踏まえ、特例として+0.14%が追加された。

このようなメリハリのある配分は、医療法人経営情報データベース(MCDB)の整備により可能となった。MCDBは、厚生労働省が医療法人から提出された事業報告書や損益計算書などの情報を収集し、データベース化したものである。2023年8月以降、すべての医療法人に対し、これらの財務・経営情報の都道府県への届出が義務付けられ、収集・分析の仕組みが確立した。これにより、医療機関の経営支援や診療報酬改定を、エビデンスに基づき、迅速かつ精緻に行えるようになった。

MCDBの分析(※1)では、病院(20床以上の医療施設)の経常収益対経常利益率(平均値、以下該当同じ)が2023年度の1.2%から2024年度(速報、以下該当同じ)には0.1%へ低下した一方、無床診療所も9.3%から6.4%へ下がったものの、依然として高水準を維持していることが確認された(資本金1億円未満の法人企業の経常利益率は2024年度で3.8%)。また、病院を機能別に見ると、高度急性期や急性期の利益率が低い一方、回復期や慢性期は黒字を確保していることも明らかとなった。

診療報酬の配分をさらに最適化し、保険料や税を負担する国民が納得できる改定とするには、個々の医療機関の経営状況をより詳細に把握することが不可欠である。また、実施された改定の影響を検証することも必要だ。それには、MCDBへの報告内容のさらなる拡充が求められる。例えば、診療所で人件費の次に大きい費用項目である「その他の医業費用」の内訳は把握できていない。また、診療報酬による職種別の賃上げ状況を検証するには、給与や人数のデータが必要だが、現在は提出が任意となっている。次回の診療報酬改定に向け、報告様式の精緻化の検討に期待したい。

加えて、MCDBの活用を、医療機関における経営効率化にも広げることが重要である。分析結果からは、同じ医療機能を有する病院間でも、費用構造に大きな差があることがわかった。急性期病院の中には総費用に占める給与費比率が顕著に高い施設があり、人件費構造や人材配置の効率性に課題のある可能性が示唆される。経済環境の変化に対応しつつ質の高い医療を持続させるためには、MCDBによる費用構造の見える化を通じて経営面での高度化を進め、限られた医療資源を有効活用する視点が必要である。

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執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 石橋 未来