社長の本音も見える?統合報告書の読みどころ
2025年11月14日
上場企業からの統合報告書に関する開示を目にする機会が最近増えている。作成する企業数が増えていることもあろうが、TDnet(適時開示情報閲覧サービス)で「統合報告書」という言葉を用いて過去3年間の開示状況を月別に調べると、直近2年は10月の開示件数が最も多かった(図表)。
統合報告書とは決算情報、成長戦略、資本政策などの財務情報に加え、ガバナンス、人的資本などの非財務情報が盛り込まれたものである。統合報告書の多くは、その企業の成り立ちや歴史も記載されており、1冊に目を通せば企業の昔と今を把握することができる。投資家のみならず、様々なステークホルダーに向けて書かれていることが特徴的である。最近では就職活動中の学生に対する企業案内資料としても活用されているという話を耳にする。
筆者は業務上、上場企業を訪問することが多く、訪問前の情報収集の一環として、決算説明用資料や中期経営計画と並んで統合報告書に目を通すようにしている。訪問先以外でも関心を持った企業があれば、統合報告書を探して読むことが多い。統合報告書の中でも最も楽しみにしているのは、社長や会長など経営陣のメッセージである。様々なステークホルダーに向けて発信されているため、これまでの企業の成り立ち、企業文化、注力事業や新規事業の解説、成長戦略、資本政策、人的資本投資など、内容は非常に多岐にわたる。多くの統合報告書を読む中で、時に中長期的な企業価値向上を目指すことを冒頭で述べたり、文章全体の主題にしたりするものに出会うことがある。持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指す東京証券取引所の改革に関する情報発信を業務とする筆者にとって、こうした内容は非常に興味深い。そのような企業は成長投資や資本政策などを分かりやすく説明し、その進捗状況の報告も欠かさない。株主還元にも積極的であることが多い印象を受ける。
経営陣のメッセージを毎年刷新するために、様々な工夫を凝らしている企業も見受けられる。たゆまぬ努力で毎年作成される統合報告書であるが、投資家との議論の場では意外にも話題に上ることは少ない。企業の充実した情報が得られることに加え、経営陣の生の声に触れられる資料は貴重であると筆者は感じている。
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- 執筆者紹介
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政策調査部
主任研究員 神尾 篤史
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