2025年12月05日
サマリー
◆地方銀行の合併・経営統合には、コスト削減と機能高度化という二つの主要な動機がある。コスト削減は重複機能の廃止や規模の経済性の発揮によって、機能高度化は比較優位な手法への統一や専門性の向上によって実現される。本稿では、これらの効果発現プロセスを組織(機能)別・再編形態別に整理し、定量的・定性的に考察した。
◆コスト削減効果については、合併を経験した銀行で職員数の減少幅が大きい傾向がみられるものの、業態差や外部要因の影響も大きく、それを単純に合併効果とみなすことはできない。また、効率性指標の水準や変化には地域経済や金融構造の多様性が影響しており、再編による効果の定量評価には慎重な検討が必要だ。
◆一方、金融商品・サービスや内部管理の高度化が進む中、地域金融機関に求められる専門性の向上も再編の重要な動機となる。経営統合は、合併効果を機能別に分解し、選択的に共同化する再編形態として位置づけられる。近年の銀行業高度化の流れの中では、コスト削減よりむしろ機能高度化が地域金融機関の再編における主要な課題となる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
地方銀行の越境再編
その土台にある地域経済圏の再構築
2025年07月11日
-
貸出先業種でみた地銀・信金の違い
再編後の地域経済エコシステムにおける中小企業金融の担い手
2022年03月02日
-
経済圏別の地域金融機関シェアの試算
中小地方都市で存在感を示す信用金庫
2018年09月07日
同じカテゴリの最新レポート
-
公共施設マネジメントと公会計
〜機能する行政評価〜『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
持続可能な社会インフラに向けて 水道広域化のスケールメリットの検証と課題
足下のコスト削減よりむしろ技術基盤の強化
2025年04月22日
-
水道管路の性能劣化の現状とその対策
都市部の経年化よりむしろ低密度・人口減地域の投資財源不足が課題
2025年03月14日

