ハーバード等名門大学をトランプ大統領が嫌うのは?
2025年07月07日
トランプ大統領は、SNSなどを通じて、ハーバード大学は極左(far left)であり、極左の大学が他にも多数存在すると大学批判を繰り広げている。トランプ政権がハーバード大学をはじめとする米国名門大学と対立している理由は多々あろうが、今や大学は民主党支持者で埋め尽くされているのだから、共和党が反感を持つのも仕方がない。
これは意外なほど明確にデータで裏付けられた事実だ。2017年の資料に基づき米国の51のリベラルアーツカレッジの教員5,197人を調査したところ、民主党支持と共和党支持の比率に顕著な差があったという(※1)。宗教学を教える教員では70対1、英語学では48.3対1、哲学・歴史学・心理学ではおおよそ17対1、政治学では8.2対1だった。リベラルアーツカレッジとは、職業的な専門知識ではなく、幅広い学問分野を学ぶことを重視した比較的小規模な大学だ。
教員のうち民主党支持者が圧倒的多数なのは、ハーバード大学など、我々がイメージする米国の名門大学でも同様だ。各大学の学生新聞は、自校教員の政治的傾向を調査して公表しているが、教員の支持が民主党に大きく傾斜していることは明らかだ。
“The Harvard Crimson”(2024年10月25日)は、ハーバード大学の理事や教員が2024年の米国大統領選挙に先立ち、議員候補者や政治運動に230万ドル超を寄付し、その約94%が民主党向けであったと伝えている。大部分が民主党のカマラ・ハリス候補への寄付だった。ハーバード大学の中核である文理学部(Faculty of Arts and Science)教員の77%以上が、自身の政治的傾向を「非常にリベラル」(約32%)または「リベラル」(約45%)として自己認識しているとの調査もある(2023年5月22日)。「保守的」は3%弱、「非常に保守的」は1%に満たなかった。
2024年にはイェール大学関係者による政治的寄付金は75万ドル超だったが、その97.26%が民主党向けであったことを“Yale Daily News”(2024年10月7日)は報じている。別の調査では、イェール大学の教員1,511人のうち支持政党が判明した1,032人の77%が民主党に登録があるか、明確な民主党支持者であり、共和党側は3%にすぎなかったという。
“The Stanford Daily”(2024年10月30日)によれば、2024年の大統領選挙でスタンフォード大学関係者からカマラ・ハリス候補への寄付は79万4,009ドルであったのに対して、トランプ候補への寄付は1万8,280ドルであったという。スタンフォード大学の寄付が民主党に流れる傾向は年を追うごとに強くなっているとも報じている。
民主党の票田となっている大学をどう変えるかは、トランプ政権の教育改革の大きな目的の一つだ。このような状況を生んでいるのは大学への補助金交付を実質的に決定する大学認定機関(教育の質や教育環境を評価する)がリベラルな観点に立っているためであり、これを改変する必要があると共和党系シンクタンクは政策提言している。トランプ大統領はこのシンクタンクの提言からは距離を置くと語ったことがあるが、トランプ政権に多くの人員を送り込んでおり、影響力は軽視できない。今後は、リベラルな(あるいは「極左」な)価値観を維持し続けている大学は、政府からの支援を受けにくくなるだろう。
支持者に非大卒者が多いといわれるトランプ大統領が、エリート中のエリートであるハーバード大学に絡んでいるというよりは、大学における政治的中立性の確保を求めていると考えた方が良さそうだ。ハーバード大学に限った話ではない。
(※1)Mitchell Langbert “Homogenous: The Political Affiliations of Elite Liberal Arts College Faculty”(2019年3月29日)
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政策調査部
主席研究員 鈴木 裕
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