スピンオフは今後増えるのか
2025年06月23日
2025年5月、ソニーグループが金融事業のパーシャル・スピンオフ実施に関する具体的な計画を公表した(※1)。スピンオフは、子会社や事業を切り出して独立させることを指し、2020年3月に、コシダカホールディングス(東証一部(当時)上場)がカーブスホールディングスをスピンオフして上場させた事例がある。スピンオフに厳密な定義があるわけではないが、税法上の優遇措置が適用されるのは一定の要件を満たす場合に限定されている。要件を満たす場合は、典型的にはコシダカホールディングスの例のように、上場会社(A社)が完全子会社(B社)の株式の全てを自社の株主に交付するとともにB社株式を上場するケースが該当し、上場子会社を他社に売却するようなケースは該当しない。
パーシャル・スピンオフは部分的なスピンオフといえ、A社がB社株式を全て自社株主に交付するのではなく、一部(20%未満)はA社が持ち続ける場合が該当する。パーシャル・スピンオフを実施する場合、税法上の要件を満たすだけでなく、産業競争力強化法の事業再編計画の認定も受ける必要がある。
では、パーシャル・スピンオフを行うことにはどのような意義があるのだろうか。ここでは話を分かりやすくするために、パーシャル・スピンオフではなく、単純なスピンオフの場合について説明する。
スピンオフを行った場合、A社とB社がそれぞれ独立して経営されるようになることで、各社の経営陣は中核事業に専念できるようになるし、B社はA社のライバル企業とも取引がしやすくなる。また、B社も上場すれば、独自に資金調達を行うことが可能になる。加えて、両社とも事業がシンプルになることで、複数の事業を営む場合に株価が割安に評価される「コングロマリット・ディスカウント」が解消されることが期待できる。
では、スピンオフは今後増えるのだろうか。経済産業省の価値創造経営小委員会が5月末に公表した中間報告(※2)には、成長期待も資本収益性も低い企業群が資本収益性を高める方法として、事業の組み換え等の構造改革を行うことが挙げられており、その手段としてスピンオフが検討されることが考えられる。
事業組み換えの方法には、単純に子会社を売却する方法もあり、この場合は買い手から対価を得ることができる。一方、スピンオフの場合、A社は自社株主にB社株式を現物配当するだけでありその対価は得られないため、A社経営陣としては採りづらい面がある。
しかし、子会社売却の場合は、子会社の規模が大きければ対価は巨額になり、対価を支払うことができる買い手を見つけることが難しい。一方、スピンオフであれば、B社を取得することになるA社の既存株主は対価を支払う必要はないため、大規模な企業であればスピンオフの方が利用しやすいケースもあるだろう。今後、成長戦略の一環として事業ポートフォリオの最適化を目指す上場企業が増えてくれば、その手段としてスピンオフが利用されるケースは増えていくのではないだろうか。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 金本 悠希
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