米国のトリプル安で日本にチャンスも

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2025年05月23日

トランプ米大統領が2025年4月2日、市場で予想されている関税率を大きく上回る相互関税を発表した。これを受けて、米国の株式、国債、通貨ドルはトリプル安に見舞われた。代表的な株価指数であるS&P500は終値ベースで4月8日までの4営業日で12%急落した。2月19日につけた過去最高値からは19%下落し、弱気相場入り(高値から20%下落)の寸前にまで落ち込んだ。トランプ大統領が、4月9日に相互関税の上乗せ分を90日間停止すると発表して、株式市場は反発に転じた。

米10年国債は、相互関税が発表された4月2日から4日までは投資家のリスク回避姿勢の強まりを受けて利回りが低下(債券価格は上昇)した。しかし、4月7日から始まる週には市場の混乱が深まるなかで、通常は資金の逃避先、つまりセーフヘイブンとして買われるはずの米10年国債の利回りが上昇(債券価格は下落)した。終値ベース利回りは0.5パーセント・ポイント程度上昇し、週間ベースで1980年代以来の大幅な上昇となった。

米ドルの他通貨に対する総合的な動きを示す実効為替レートで、米国市場関係者が重視するドル指数(DXY)(※1)は、相互関税発表前日の4月1日から4月21日にかけて6%下落した。下落幅が大きかったのは相互関税の90日間の停止を発表した翌日の4月10日とその翌日の4月11日でそれぞれ2%、1%下落している。過度の懸念が後退して、ドル売りの流れが一旦止まっても不思議ではないタイミングで米ドル売りが強まったわけである。これら一連の動きは、ドルあるいはドル資産に対する市場の信認に傷が入ったと思えるものであった。

とはいえ、ドルが世界の基軸通貨の地位から陥落することは、流動性のある米国金融市場の存在などから当面は考えられない。しかし、グローバル投資家が米ドル以外の資産への分散を考えても不思議はない状況が生まれたとも言える。日本は投資先としてグローバルな資金を取り込むチャンスを迎えていると言えるのではないだろうか。

(※1)ドル指数(DXY)は、ユーロ57.6%、日本円13.6%、英ポンド11.9%、カナダドル9.1%、スウェーデンクローナ4.2%、スイスフラン3.6%で構成されている。

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山崎 政昌
執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 山崎 政昌