デジタル時代における万博の意義

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2025年04月09日

2025年4月13日より同年10月13日までの半年間、大阪の夢洲(ゆめしま)にて大阪・関西万博(EXPO 2025)が開催される。今回、チケットを手に入れることができたので、筆者は行くつもりだ。

日本では1970年開催の「日本万国博覧会(大阪万博、Expo’70)」を端緒として、1975年~76年開催の「沖縄国際海洋博覧会(沖縄海洋博、Expo’75)」、1985年開催の「国際科学技術博覧会(つくば万博、EXPO’85)」、1990年開催の「国際花と緑の博覧会(花の万博、Expo’90)」、2005年開催の「2005年日本国際博覧会(愛・地球博、愛知万博)」などの大規模な博覧会が開催されてきた。その他、地方の博覧会も含めると、日本ではこれまでに大小さまざまな博覧会が開催されている。

そもそも万博(Expo、万国博覧会や国際博覧会などとも呼ばれる)とは、国際博覧会条約に基づいて行われる複数の国が参加する博覧会を指しており、国際博覧会事務局(BIE)によると「人類が直面する根本的な課題に対する解決策を見つけることを目的とした世界的なイベントであり、選ばれたテーマを通じて魅力的で没入感のある活動を提供します。(訳は筆者。以下、省略)」とされている(※1)。この万博の起源は1851年にロンドンで開催された第1回ロンドン万国博覧会である(※2)。その後、世界各国で万博は開催され、アジア初の万博が1970年の大阪万博だった。当時の日本は海外のモノ・技術そしてヒトに触れる機会が今と比べて少なかったことや高度経済成長期という時代背景もあり、大阪万博は大きな盛り上がりを見せた。

しかし現在では、インターネットや海外旅行・インバウンドの増加によって、海外のモノ・技術・ヒトなどに触れる機会は圧倒的に増えただけでなく、VR(仮想現実)のようにその場にいなくてもリアルに近いさまざまな体験もできるようになり、1970年当時の状況とは様変わりしている。そうした中であえて万博を開催する意義を見つけることの難易度は、以前と比べて格段に上がっているといえよう。

デジタル化やグローバル化が進んだ今の時代では、例えば直接触ったり、その場の温度・湿度・匂いや空気感といったものを肌で感じたり、まさに現場でしか味わうことのできない極めてリアルな体験を万博会場で容易に得られることが大きな意義だと思われる。こうした体験は、いわゆるセレンディピティ(予想外の機会に触れて、探しているものとは別の価値を見つけること)を起こすことで、ひいてはイノベーションにもつながっていく。リアルな体験の重要性は、特にコロナ禍を経て人々に強く意識され始めており、例えば足元で出社比率が上昇している背景にも同じことがいえそうだ。

デジタル時代の到来により、人々は目的をもって取捨選択する場面が増える一方で、偶然に出会うという場面は以前より少なくなってきたと感じられる。デジタル時代において逆にその意義が高まったリアルな場で出会う偶然の体験を、今回の大阪・関西万博が提供してくれるのか、これからの訪問が楽しみである。

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溝端 幹雄
執筆者紹介

経済調査部

主任研究員 溝端 幹雄