持株会社体制の解消はネガティブな情報?

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2025年03月19日

  • マネジメントコンサルティング部 主席コンサルタント 吉村 浩志

少し前の話になるが、持株会社化の相談を受けた際に、「持株会社体制の解消事例」を教えてほしいと言われたことがある。なぜ解消事例を知りたいのか問い返したところ、「持株会社化の検討を進めるにあたって、失敗事例を押さえておきたい」とのことだった。そのときには、「持株会社化の中には、経営統合のために一時的に共同で持株会社を設立するケースもあり、統合後の再編を完了した段階で解消するケースもあり、解消=失敗とは限らない」という趣旨の返答をしたところ、「単独型の場合はどうなんですか?」と続けて質問を受けたように記憶している。

そうしたやり取りを思い出しつつ、先日、持株会社体制の解消についてのレポートを執筆した。準備をしているときに改めて気が付いたのは、「持株会社体制への移行」については、開示資料の表題から一目瞭然のものが多いのに対し、「持株会社体制の解消」については、開示資料の表題から読み取ることができるものが極めて少ないということだ。どちらかというと、積極的には開示したくないという空気が感じられるケースが多い。当事者にとっては、持株会社体制の解消はネガティブな情報との認識なのだろうか?

開示文書の中で、持株会社体制の解消について説明しようとすると、持株会社体制への移行とその後の経過についても言及することとなるため、そこに苦慮するということはわかる。ただ、掲げた目標に対して、どのような取り組みを行ったか、その結果がどうだったかについて説明するのは、経営計画の振り返りと同じことであり、その振り返りは企業の将来にとって大事なプロセスだと言える。

経営体制・組織体制の変更は、内外ともに注目するイベントであり、企業としてはそこにメッセージを込めることができる。持株会社体制の解消は、持株会社体制からの卒業と位置付けることもでき、そこにポジティブな意味を込めることもできるはずだ。

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マネジメントコンサルティング部

主席コンサルタント 吉村 浩志