スーパーボウルのCMから読み取る2025年のAI業界のメッセージ
2025年02月20日
2025年2月10日(日本時間)にスーパーボウルが米国で開催された。これは米国のプロアメリカンフットボールリーグ(NFL)の年間王者決定戦であり、毎年2月初めの日曜日(日本時間では翌日月曜)に行われている。毎年米国での最高視聴率を記録するイベントであり、2025年も1億2600万人以上(国民の約37%)の過去最高の視聴者数となった。今年は米国大統領として初めてドナルド・トランプ大統領が現地観戦したニュースなども話題を呼んだ。
その国内外での視聴者数の多さから、テレビCM広告への注目も非常に高くなり、その広告枠の競争も激しい。今年は50社程度のCMが放映され、その放映料は30秒で約800万ドルであった。一度限りのCMだが多くの有名人が登場したり、映画のような作り込みが行われていたりと、各社力を入れたものになっている。
そのため、スーパーボウルのCMは、テクノロジーのトレンド把握にも役立つ。過去にはApple社のパーソナルコンピュータの革新的なCMやeコマース、暗号通貨といった新たなトレンドも紹介された。今回はAIに関連する企業CMから、一般消費者に向けたメッセージを考察したい。
まずはGoogle社のスマートフォン(Pixel)&生成AI(Gemini)の2分間のCMである。主役である父親が生成AIと就職面接の練習をしているが、Geminiとの会話を通して娘の子育ての過程を思い出す中で、就職面接に自信を持って挑む、というものだ。AIが単なる技術ツールではなく、人間との自然な共生や心理的な支援を提供できることを消費者にアピールしている。
次に生成AIのリーダー、OpenAI社の30秒のCMである。狩猟・農業・蒸気機関といった人類の発展を支える歴史の後に、「次は何を作りますか?」という声とともに「ChatGPT」とだけ表示される。このCMでは生成AIサービス自体を革新とするのではなく、人々が次の革新を実現するための手段となることを強調していた。
ほかに、Meta社はRayBan社と共同開発したスマートグラスの紹介を行っていた。有名人を登用し、モダンアートへの批判も交えつつ、ウェアラブルAIの可能性を改めて訴えている。またSalesforce社は、空港乗り継ぎにおける旅行者のストーリーを通してAIプラットフォームの価値を紹介している。いずれも一般消費者の生活がどう変化するか、にフォーカスしたメッセージになっている。
一方で、ウォーターサーバを扱うCirkul社のCMでは、「音声AIとの会話で10万本のボトルを誤注文する」というユーモアあふれるストーリーが描かれていた。こちらは実際にSNSキャンペーンとも連動していた。これはAIの便利さと同時に、そのリスクを消費者に気づかせる意図もあると考えられる。
今回のCMを総合的に見ると、AIが消費者の日常生活に自然に溶け込む未来を提示している点が共通している。日本の企業も、AIの導入や活用において「最終ユーザにとっての具体的な価値」、技術が創る「生活や仕事の変化」をどのようにイメージし、伝えるかが、注力すべきポイントとなるだろう。なお、これらすべてのCMはYouTubeで公開されている。興味があるものについてはぜひ一度自分の目で見ていただきたい。
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- 執筆者紹介
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デジタルソリューション研究開発部
チーフグレード 森岡 嗣人
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