DeepSeekを企業経営者等はどのように捉えているか
2025年02月10日
中国のAI新興企業であるDeepSeekがリリースした生成AIサービスが株式市場で大きな話題になっている。これまで高性能AIには膨大なGPUが必要とされてきたが、DeepSeekがリリースしたサービスは米OpenAIの「ChatGPT」よりも低コストで作られ、しかも性能は「ChatGPT」に匹敵するという。もっとも、マイクロソフトとOpenAIはOpenAIの技術から出力されたデータが不正な方法でDeepSeekによって入手されたかどうかを調査しているとBloombergが報じている(※1)。この他にも開発額の大きさの真偽といった様々な報道がDeepSeekにはなされている。
株式市場で話題になったのが1月末という企業の決算説明会の時期でもあり、企業経営者等にDeepSeekのサービスが自社に与える影響などに対する質問が飛んでいる。以下の図表は半導体材料、半導体製造装置メーカー、大手IT企業の決算説明会時の経営者等の発言である。
企業経営者などは、技術進歩の点からDeepSeekのサービス公表の影響を肯定的に捉える意見が多い印象である。大手IT企業の設備投資は前年と比べて増額のアナウンスがなされている。一方で、半導体製造装置など関連銘柄の値動きを見ると、これまでの巨額のAI投資が今後も継続するのかという疑問が完全に拭われたわけではなさそうである。技術革新によって資源利用の効率性が向上しても、資源の消費量が逆に増加するという「ジェボンズのパラドックス」という考え方もあるが、株式市場は今後の動向を半身で構えている状況に見える。
(※1)Bloomberg「DeepSeekがオープンAIデータ不正入手か、マイクロソフト調査中」(2025年1月29日)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
政策調査部
主任研究員 神尾 篤史
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日