「103万円の壁」引上げが、孫への投資資金の贈与の契機となるかも
2025年01月10日
政府・与党は、2025年度の税制改正大綱で、いわゆる「103万円の壁」につき、123万円まで引き上げる方針を示した。
いわゆる「103万円の壁」の引き上げを巡っては、これまで家計の減税額、財政への影響、労働供給の変化などが主な論点となってきた。だが、実は「103万円の壁」は証券投資にも関係する。
いわゆる「103万円の壁」の「103万円」は、給与所得者の場合の所得税の課税最低限と扶養控除等の対象となる上限年収を示したものだ。現行法では、所得税の基礎控除額の原則48万円と給与所得控除の最低保証額の55万円の合計が103万円となるため、収入の全てが給与収入である者の場合、年収が103万円以下であれば所得税はかからない(※)。
「103万円」のうち、給与所得控除は文字通り給与所得者にのみ適用されるが、基礎控除の48万円は原則としてすべての納税者に適用される。つまり、給与所得や事業所得だけでなく、株式や投資信託などの証券投資による所得(譲渡所得や配当所得)から控除することもできる。この仕組みを有効活用できるのが、「子ども」(未成年者)である。
他に課税所得のない子どもが証券投資によって所得を得た場合、基礎控除によって年48万円まで所得税はかからない。
政府・与党案では、2025年分の所得税から、基礎控除を48万円から58万円に引き上げるとしている。未成年者である0歳から17歳までの18年間の基礎控除の累計額は現行864万円だが、与党案が実施されれば1,044万円に増加する。子や孫への投資資金の贈与によって、「未成年の期間の基礎控除」を活用する余地が大きくなる。祖父母にとっては「103万円の壁」の引き上げが、孫への投資資金の贈与の契機となるかもしれない。
いわゆる「103万円の壁」の引き上げは、1995年以来、実に30年ぶりで、証券投資のほかにも様々な制度に波及効果を及ぼすことが想定される。引き上げ幅も今後の与野党協議により修正される可能性がある。制度改正の情報につき、引き続き注視するとよいだろう。
(※)本コラムでは、所得税について述べている。住民税の基礎控除額は現行では原則43万円であり、政府・与党はこの金額を据え置く方針である。所得税が非課税であっても、所得によっては住民税が課税される場合があることにも留意が必要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
人手不足時代の外国人労働者の受け入れと共生の課題
潜在成長率を年率0.4%pt押し上げ/共生の鍵は日本語教育
2026年02月26日
-
テキスト分析が映し出す金融当局の楽観視
金融当局ネガティブ指数で、金融システムへの警戒感の変化を読む
2026年02月26日
-
ガバナンス・コードはスリム化するか?
原則の統合によって原則数減少、独立性判断方針の「策定・開示」から「策定」へ変更し要開示事項が減少
2026年02月26日
-
高市政権の消費減税と成長戦略を検証する
成長投資・危機管理投資に求められる「選択と集中」
2026年02月26日
-
消費税減税より「最初の一歩」を。米国のトランプ口座が示す物価高対策
2026年02月27日

