2024年11月27日
8月29日の夕方、静岡の大雨で新幹線が運転見合わせとなり、京都駅のコンコースは運転再開を待つ大勢の人であふれていた。筆者もその場に居合わせた。スマホで経路検索すると北陸経由の迂回ルートがヒットしたので、スマートEXで払い戻しをし、券売機に並んで敦賀駅乗り継ぎ北陸新幹線の最終チケットを取った。
「運行状況はHPをご確認ください」の掲示はあったが、回線が混雑しているのか繋がりにくい。スマホのバッテリ残量が10%を切っていたのも心配の種だった。これ以上の消耗を防ぐため、家に「心配ない」のLINEを送った以外の使用は控えることにした。京都発の特急が敦賀駅に着くと急ぎ足で新幹線駅の待合室を目指した。カウンター席に充電サイトがあって安堵したが、とにかくスマホが命綱と感じた数時間だった。
ふりかえれば、仕事であれプライベートであれスマホは旅の必需品になっている。東京の自宅から例えば福岡に出かけるにしても、最寄り駅からリムジンバスで羽田空港まで行き、空港の保安検査場を抜け、空港から地下鉄に乗って目的地に着くまでスマホのタッチ操作で完結する。
バスは地方によってまちまちだ。地方で移動するのはバスが多いが、均一料金、前乗り後ろ降りの東京流に慣れていると地方のバスがちょっと怖い。地方のバスは後ろ扉から乗り整理券を取る。刻々と上がる運賃掲示板で料金をうかがい、小銭を用意しなければならない。持ち合わせがなければバスの停車中に両替するが、タイミングを逃し降りるときに両替すると降車を待つ人の視線を背中に感じ焦ることになる。
スマホが使えればだが、バスも便利な乗り物だ。まずは最終目的地までの乗り継ぎを検索できる。便数が少なくともバスの位置情報システムで到着時間が予測できれば時間まで街歩きや買い物を楽しめばよい。GPSを使えば「つぎ停まります」のボタンを押すタイミングに迷わない。キャッシュレスなら運賃掲示板や両替に気を取られない。なにより同乗者や運転手への「迷惑」を心配せずにすむ。
筆者の場合、目的地に着くと観光案内所を探して観光地図を手に入れる。スマホで開錠できる電動自転車を使う機会も増えた。行動半径が数キロ先まで広がるし、坂もすいすい登れる。地方都市の旧市街ならくまなく周れる。
地方創生2.0にあたっても観光振興、特に外国人観光客の誘致は優先課題だ。具体的に何をすればよいか、私が旅先で困ることは外国人ならなおさら困るのではないかと考えた。聴覚言語が通じない分、コミュニケーションの道具としてスマホはまさに命綱である。
案内板、特に地図や観光パンフレットの類は多言語対応が求められよう。それも紙とダウンロード版の両方があればよい。ラックの脇にQRコードを表示し、スマホあるいはタブレットで見ることができるようその場でダウンロードできるような仕組みがベストだ。旅の記念に保存してもらえるメリットもある。
本数が少なく時間が読めないバスの弱みもスマホ周りのデジタル化で解決するし、工夫次第で強みに転じる。導入にあたってはキーボードアレルギー、チャット文化への適応、セキュリティ意識などリテラシ—面の課題もあるが、何はともあれデジタル化を進めることが観光振興の肝だ。
そしてこれらの土台となるのが、太くて速い通信回線(特にWi-Fi)と多数の充電サイトである。車社会に例えれば渋滞知らずのバイパス道路とガソリンスタンドのようなものだ。情報収集から支払いまで何でもスマホでできるとはいえ、インフラが弱ければ使えない。辺りがだんだん暗くなり混雑の度を増す京都駅で強く感じた。
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- 執筆者紹介
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政策調査部
主任研究員 鈴木 文彦
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