石破政権の経済政策、「岸田政権から継承」の先が見えず
2024年10月28日
2024年10月1日に誕生した石破茂政権は、岸田文雄政権の経済政策を継承する方針である。だが、継承した政策の中でどこに注力し、どのようにして加速させるのかといった具体的なビジョンが現時点で不明瞭だ。
石破首相がとりわけ重視する地方創生では、「地方創生2.0」を始動するという。もっとも、10月27日投開票の衆議院選挙における自由民主党(自民党)の政権公約を見ると、掲載された地方創生策の多くは岸田政権の「デジタル田園都市国家構想総合戦略」などで盛り込まれたものだ。石破政権の新たな施策として「地方創生の交付金の倍増」が挙げられているものの、増加額は0.1兆円程度であり、これまでも補正予算で上積みされてきた。新たな会議体の設置や今後10年の基本構想の策定も予定されているが、「看板掛け替え」にとどまる可能性も否定できない。
首相就任後に大きな関心を集めたのが、最低賃金の引き上げ加速だ。石破首相は就任前(自民党総裁選挙政策集)に、最低賃金を全国加重平均で1500円に引き上げるという政府目標の達成時期を、従来の「2030年代半ば」から「2020年代」に前倒しで「実現」すると述べていた。それが所信表明演説では「目標に向かってたゆまぬ努力を続けます」とトーンダウンし、前出の政権公約には達成時期が明記されなかった。経済実態を踏まえて軌道修正した可能性がある。岸田政権は「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針)で「より早く達成ができるよう(中略)取り組む」と述べており、両政権の方針の違いは実質的には小さいようにみえる。
岸田政権では大型の経済対策が常態化したが、石破政権でも続きそうだ。石破首相は今秋に策定される新たな経済対策について、国費13兆円程度(定額減税等を合わせると17兆円前半)だった2023年度を上回る補正予算にするとの考えを示した。実施すれば、2025年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化させる財政健全化目標の達成は極めて困難になる。
日本経済の当面の課題はデフレからの完全脱却であり、賃金が名目でも実質でも安定的に上昇する状況を実現することである。この点、物価動向に関連する広範なデータから判断すると、再びデフレに戻る可能性はかなり低いとみられ、実質賃金は前年比で上昇基調へと転じつつある。石破政権はデフレ脱却後を見据え、岸田政権から継承した経済政策や財政運営を総点検し、目指すべき経済像を実現するための政策体系「イシバノミクス」の具体化を進めるべきだ。
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- 執筆者紹介
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経済調査部
チーフエコノミスト 神田 慶司
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