株価変動に動揺しないために改めてNISAのねらいを考える
2024年08月19日
日経平均株価は、2024年7月11日に史上最高値の42,426円77銭を記録したが、8月5日には年初来安値の31,156円12銭と、1か月足らずで約27%も下落した。特に2024年1月からNISA(少額投資非課税制度)で投資を始めた個人投資家にとっては、年初からの株価上昇と非課税の恩恵で利益期待が膨らんでいたと思われ、短期間での株価下落は、より大きな動揺を与えただろう。
株価の先行きが不透明な状況において、NISAで投資を始めたばかりの人は、制度のねらいを改めて考えることで、株価の乱高下に一喜一憂することなく、精神的安定を保つことが重要であると考える。
まず、特定口座などの他の口座での金融商品の売買とは異なり、NISAで保有する金融商品の売却益は非課税、損失はゼロとみなされる。すなわち、損失を他の口座で生じた利益や配当と通算して課税所得を圧縮することはできない。もちろん、その損失を翌年以降に繰り越すこともできない。これは、投資者が非課税の恩恵を受ける以上、損益通算も認めないことでバランスを取っているのであるが、短期売買よりも長期投資(利益が出るまで待つ)を促している仕組みと捉えられる。
また、制度上、NISA口座で保有する金融商品を年の途中で売却しても、年間投資枠(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)の再利用はできない。一方、非課税保有限度額(全体1,800万円、成長投資枠1,200万円)については、簿価残高(投資額)で計算され、保有金融商品を売却すれば、簿価残高は減少し、その分、新たに金融商品をNISAで購入できる、すなわち非課税保有限度額の枠の再利用は可能である。この非課税保有限度額を最短で使い切るのは5年間(全体360万円×5=1,800万円、成長投資枠240万円×5=1,200万円)なので、逆に言えば、最初に金融商品を購入してから5年間は売却せずに保有することを可能とする仕組み(非課税枠を5年間使わなければもったいない仕組み)と捉えることもできる。
もちろん、NISAで長期に投資していれば、どのような金融商品でも必ず利益が得られるというわけではない。筆者も長年積み立て投資を継続しているが、口座の評価損益額から目を背けたくなる期間がかなり長かった。しかし、インデックスファンドの投資から始め、徐々に資産運用に慣れ、利益を得る経験をすることができている。
NISAで投資を始めたばかりの投資家も、ぜひ、中長期投資を目的とした制度のねらいを改めて考えることで、精神的安定を保ち、資産運用の成功体験を積んでいただきたい。
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金融調査部
金融調査部長 鳥毛 拓馬