2024年度はドローン航路の整備・自動運転・インフラDXが加速

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2024年04月08日

2024年3月28日に、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のデジタル・アーキテクチャ・デザイン・センター(DADC)は、今後約10年間のデジタル技術の社会実装の計画を示した「デジタルライフライン全国総合整備計画」(以下、整備計画)の案を公表した(※1)。この整備計画は、自動運転やAIによるイノベーションを線・面で社会実装することで、働き手の賃金の向上を実現するとともに、人手不足や災害激甚化といった社会課題の解決を図るものだ。他のデジタル基盤の整備計画などと併せて、2024年度から日本でデジタル技術の社会実装が加速するだろう。

まず2024年度は、アーリーハーベストプロジェクトと呼ばれる先行地域での3つの実装に向けた支援策が取られる。1つ目は、180㎞以上の長距離を移動するドローン航路の整備だ。こちらは埼玉県秩父地域の送電網上空や静岡県浜松市の天竜川水系上空をドローンで航行するものである。その後、他の全国の送電網上空や一級河川上空でのドローン航行を広げていき、高い需要がある主要幹線での巡視・点検、物流等のドローンサービスの実装を目指す。

2つ目は、自動運転サービス支援道を設定することだ。これは、自動運転車により人や物がニーズに応じて自由に移動できるよう、ハード・ソフト・ルールの面から自動運転を支援する取り組みである。具体的には、高速道路では新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間において100㎞以上にわたる自動運転車優先レーンを設定し、夜間に自動運転トラックの運転を行う。また一般道でも、茨城県日立市の大甕(おおみか)駅周辺で自動運転バスの運転を行うことになっている。こちらも線から面への展開が想定されている。今後、高速道路では東北自動車道をはじめとする東北から九州にかけての物流ニーズを考慮した区間において、一般道でも自動運転移動サービス実装地域を2025年を目途に全国50か所程度、2027年度までに全国100か所以上で展開し、全国主要幹線における物流路の確保や、地域交通の担い手が不足する地域における住民の移動ニーズに対応した交通手段の確立を目指す。

3つ目は、インフラ管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)である。2024年度には先行地域である埼玉県さいたま市と東京都八王子市において合わせて200㎢以上の面積を対象に行われる予定である。これは地下に埋設されている通信・電力・ガス・水道インフラの空間情報をデジタル化してその情報を相互に共有し、平時における点検作業の自動化等や災害時における復旧の早期化の取り組みを支援するものだ。これを次年度以降に全国の主要都市10か所、さらに10年後には50か所に拡大し、最終的には費用対効果が見込める規模の主要都市におけるインフラDXの実装を目指す。

整備計画では、これら3つの取り組みによる経済効果(※2)は10年間の累計で2兆円とされている。整備計画では他にも、ハード・ソフト・ルールの3つのインフラ分野でデジタルライフラインの整備を行っていくことが述べられている(※3)。

こうした整備計画に沿って着実にデジタル技術が社会に実装されていく上で重要なのは、この取り組みを地域社会や国民が受け入れていくこと、つまり社会受容性の醸成である。デジタル技術に慣れない、または、デジタル技術に拒否反応を示すような人々に対しても、社会実装で得られるメリットを共有できるように配慮していくことは今後も欠かせないだろう。

(※2)アーリーハーベストにおけるユースケースの展開のみを算出に含めたもの。

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溝端 幹雄
執筆者紹介

経済調査部

主任研究員 溝端 幹雄