日本が取り組むべきは「現役期」の格差是正

給付付き税額控除と所得税改革などで貧困層を支えよ

RSS

2025年08月25日

サマリー

◆世界的に進行する格差拡大は、ポピュリズムの台頭を通じて財政不安を招き、経済成長を停滞させるリスクがある。経済成長の停滞は、教育を含む人的資本投資などの減少を通じて労働生産性を下押しするだけでなく、格差の一層の拡大をもたらす恐れがある。こうした悪循環を避けるため、社会政策だけでなく経済成長の観点からも適切な再分配を行うことが重要だ。

◆日本の格差水準は、ジニ係数で見ると直近で0.34程度であるが、労働生産性の向上に最適な水準は0.31程度と試算される。日本では、高齢期における社会保障はある程度充実しているものの、18歳から65歳までのいわゆる現役期における所得再分配機能が弱い。また、等価可処分所得の下位10%に対する中央値の比率(貧困ギャップ)が上昇傾向にあり、「貧困層の困窮」が格差の中心的な課題だ。

◆日本の格差是正のためには、給付付き税額控除、所得税改革、積極的労働市場政策、資産運用の促進などが有効である。消費税の逆進性解消に向けた給付付き税額控除や、大陸欧州並みの税・社会保障制度による純負担率が実現した場合、ジニ係数は0.32~0.33程度に低下して最適な水準に近付くと試算される。0.6~2.9兆円程度の財源が必要となるが、消費税の軽減税率廃止や所得税収の増加によって、その財源を賄うことができる。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート

同じカテゴリの最新レポート