サマリー
◆世界的に進行する格差拡大は、ポピュリズムの台頭を通じて財政不安を招き、経済成長を停滞させるリスクがある。経済成長の停滞は、教育を含む人的資本投資などの減少を通じて労働生産性を下押しするだけでなく、格差の一層の拡大をもたらす恐れがある。こうした悪循環を避けるため、社会政策だけでなく経済成長の観点からも適切な再分配を行うことが重要だ。
◆日本の格差水準は、ジニ係数で見ると直近で0.34程度であるが、労働生産性の向上に最適な水準は0.31程度と試算される。日本では、高齢期における社会保障はある程度充実しているものの、18歳から65歳までのいわゆる現役期における所得再分配機能が弱い。また、等価可処分所得の下位10%に対する中央値の比率(貧困ギャップ)が上昇傾向にあり、「貧困層の困窮」が格差の中心的な課題だ。
◆日本の格差是正のためには、給付付き税額控除、所得税改革、積極的労働市場政策、資産運用の促進などが有効である。消費税の逆進性解消に向けた給付付き税額控除や、大陸欧州並みの税・社会保障制度による純負担率が実現した場合、ジニ係数は0.32~0.33程度に低下して最適な水準に近付くと試算される。0.6~2.9兆円程度の財源が必要となるが、消費税の軽減税率廃止や所得税収の増加によって、その財源を賄うことができる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
Well-being指標から浮かび上がる日本経済の課題
「新しい資本主義」実現には人材を「人財」と捉える取り組みが重要に
2022年02月24日
-
所得格差の拡大は高齢化が原因か
~若年層における格差拡大・固定化が本質的な課題~『大和総研調査季報』 2017年春季号(Vol.26)掲載
2017年06月01日
-
金融所得課税を含む所得税の垂直的公平性の国際比較
「1億円の壁」は米英独にも共通して確認できる現象
2022年03月31日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年11月雇用統計
失業者数が減少し、雇用環境の改善が進む
2025年12月26日
-
2025年11月鉱工業生産
自動車の減産などが押し下げ要因/当面の間は軟調な推移を見込む
2025年12月26日
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

