投資教育よりも幅広い内容が求められる金融経済教育

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2023年12月13日

金融経済教育の機運が高まっている。2023年11月20日には、金融経済教育を官民一体で進める「金融経済教育推進機構」の設立を盛り込んだ金融商品取引法等の改正が成立した。金融経済教育推進機構は2024年春に設立され、同年夏に本格稼働する予定である。

金融経済教育で教える内容としては、投資による資産形成に焦点が当たっているように思われる。その背景として、金融経済教育推進機構の設立は2022年の「資産所得倍増プラン」で提言されたことのほか、2022年4月から高校の家庭科で資産形成に関する教育内容が充実し、2024年1月からは新NISA(少額投資非課税制度)も開始するという、国民の資産形成を促す一連の動きがあることが考えられる。

ただ、金融商品取引法等の改正に関する国会での附帯決議でも触れられているように、金融経済教育推進機構が行う金融経済教育は、「資産形成だけではなく、(中略)家計管理・生活設計や消費者被害防止等」の分野も含む幅広い金融リテラシーを身に付けさせることを目指すべきだろう。

いくら投資によってお金を増やしても、家計管理がおろそかで身の丈にあった金額以上の支出をすれば資産形成はおぼつかない。また、怪しい投資話を疑うことができるような判断力を持っていなければ、投資セミナーを騙った詐欺の被害にあってしまう可能性もある。このように、実際に資産形成を行うには、投資自体に関する知識があれば十分なわけではなく、適切に家計管理ができることが土台となり、投資に関するトラブルを避けることができることも必要である。

2022年4月から高校の家庭科で資産形成に関する教育内容が充実したことを受け、金融機関等が高校に出張授業を行うケースが増えているが、授業を受ける側も、狭い意味での資産形成に関する授業だけを求めているわけではない。大和総研では高校向けに出張授業を行っているが、資産形成の方法について生徒に教えてほしいという先もある一方、「無駄遣いをしない」といった家計管理の基本的なことについて改めて生徒に教えてほしいという先もある。

このように、金融経済教育推進機構が推進する金融経済教育は、狭い意味での投資に関する知識だけではなく、家計管理や金融トラブルへの対処等、幅広い内容が対象になることになることに注意が必要だろう。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 金本 悠希