自宅付近に出没したアライグマから学ぶ、外来種の侵入を防ぐ重要性

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2023年11月27日

最近、筆者が住むマンションの掲示板に「1階の庭でアライグマの目撃情報があった、注意するように。」という内容の文書が掲示されていた。その直後、隣町で撮影された“街路樹に登っているアライグマの画像”がSNSに投稿されているのを見つけた。これまでの人生の中でアライグマをそこまで身近に感じたことがなく、疑問に思い調べてみたところ、筆者が住む自治体では年々目撃情報および捕獲数が増加しており、防除の対象になっていることを知った。

アライグマは北米や中南米に生息する動物だが、1970~80年代に主にペットとして日本に大量に持ち込まれたそうだ。その後、飼い主の元から逃亡、もしくは飼い主が遺棄したアライグマが野生化し、今では全国各地で生息が確認されているという。繁殖力が高く、天敵となる動物がいないことも、アライグマが増えた要因として挙げられている。

見た目は可愛らしいアライグマだが、果物やトウモロコシなどの農作物を食べる、家の天井裏に住み着く、狂犬病ウイルスやアライグマ回虫等複数の人獣共通感染症に感染する、ノミやダニなどを媒介する等の恐れがあり、外来生物法の特定外来種(※1)に指定されている。雑食で、ニホンザリガニやエゾサンショウウオ、トウキョウサンショウウオ、ニホンイシガメ、アオサギの卵の捕食が確認されており、在来生物への影響も懸念されているようだ(※2)。

自然環境はそこに生息する様々な生物が相互に影響を与えながら成り立っている。外来種が入ってくることで微妙なバランスが崩れ、生態系や我々の生活に思わぬ影響を及ぼすことがあり得る。環境保全を目的とする国際条約である生物多様性条約の第8条にも「生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅すること」が盛り込まれている。

外来生物法は海外から日本に持ち込まれた外来種のみを対象としている。外来種は海外から日本に持ち込まれたものだけと思われがちだが、日本国内のある地域から、もともといなかった地域に持ち込まれるものも“外来種”であり、やはり生態系への影響が懸念される。例えば、カブトムシは北海道にはもともと生息していなかったが、ペットや養殖のために持ち込まれたものが逃げ出すなどして野生化しており、北海道が注意喚起を行っている(※3)。外来種は人や物の往来により意図せず(荷物や乗り物に紛れ込むなどして)持ち込まれるケースもあるため、全てを防止することは難しいかもしれない。しかし、人為的に持ち込むことは1人1人の心がけで避けられるはずだ。

(※1)海外起源の外来種であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるもの。

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太田 珠美
執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 太田 珠美