古代ローマ人に学ぶ

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2023年10月25日

  • 政策調査部 足立 雅準

皆さんは、ローマン・コンクリートというものをご存知だろうか?古代ローマ人は、パンテオン、コロッセオ、ローマ水道の水道橋等、非常に高度な建築技術を持っていることは知られているが、その多くが古代ローマ時代のコンクリートにより建築されている。古代エジプトのピラミッド同様に、石を切り出して作られたものとばかり思っていた私にとって、これを知ったときは正直驚いた。

しかし、もっと驚いたのはその耐久性である。現代のコンクリートの寿命は50年から100年と言われているのに対し、これらは建築してから2000年近く経っているのである。なぜ、これだけ耐久性があるかというと、その製造プロセスにあるのではないかと近年になって研究が進んできている。今年1月、マサチューセッツ工科大学(MIT)が率いる国際的な研究チームの調査によると、その耐久性は、ローマン・コンクリートの原材料に含まれる火山灰と海水との化学反応を起因とした自己修復能力によるものと考えられている。古代ローマ人がこの自己修復能力の仕組みを元々知っていたのか、もしくは偶然の産物だったのかは、文献が発掘されない限り知る由もない。しかし、結果として、古代建築様式の美しさを現代人が享受できていることは古代ローマ人に感謝すべきことであろう。

翻って、規模感の違いはあるものの、現代におけるパソコン、携帯電話や家電といった主要耐久消費財の寿命は少々短いように感じる。令和5年の内閣府の消費動向調査によると、ルームエアコンの平均使用年数は13.6年、パソコンは7.7年、携帯電話にいたっては、4.4年である。もっとも、平均使用年数は寿命とイコールではなく、まだ使用できるのに、他の上位品目へ移行するケース等も含まれる。リサイクルやリユースの可能性を踏まえても、買い替えた時点で、その所持者における、その耐久消費財の寿命は尽きたとの見方もできる。

カーボンニュートラル実現の可否によらず、このままだと石油、天然ガスといった化石燃料は50年程度で枯渇すると言われている。人類が生き延びるためにも、今こそ、古代ローマ人の知恵を学ぶべき時かもしれない。

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