金融経済教育は家庭から
2023年10月23日
岸田政権の資産所得倍増プランを契機に、金融経済教育を推進しようという機運が金融界で高まっている。その司令塔として「金融経済教育推進機構」を2024年にも創設すべく、法改正が進められようとしている。
今のところ、主な目的は学校や企業(職域)での金融経済教育のレベルアップである。教材の作成や講師の派遣、シンポジウムの開催、等々が想定されている。当面の力点はそこに置かれるのだろうが、もうひとつ取り組む必要性を感じるのは、家庭における金融経済教育である。
もちろん、現在の親世代が十分な金融リテラシーを身に付けていないのでは、との懸念がある中、まずは親世代に対する教育が先決だという考え方はある。しかし、それを待っていても仕方ない。学校のカリキュラムで学んでも、実践は家庭で行うものであり、その際に親世代の金融行動が大きく影響することは明らかだ。何なら、親子で同時に金融経済教育を受けられるような仕掛けがあっても良いのではないか。海外では家族で取り組めるゲーム教材が提供されていたりもする。
デジタルネイティブ世代は、ソーシャルメディアなどネットの世界で様々な学びを得る世代であり、ネットでの情報収集能力が極めて高い。しかし、ネット上に存在する情報は玉石混交であり、リスクの高い投機行為に容易に誘導されてしまう恐れも否定できない。それに対してアドバイスしたり、ブレーキを掛けたりするのは家庭の役割ということになる。
日本では、金融所得について「不労所得」として、あまり良く思われない風潮もあるが、ギャンブル性が強い「投機」と実体経済の動きに裏付けられた「投資」が混同されていることも一因ではないかと思う。これらの感覚は家庭で受け継がれてきた面も否定できない。家庭でお金の使い方、増やし方について目を背けずに会話する機会が増えれば、自然に正しい理解が身に付くような気もする。なお、「投資」に対して正しく理解するという意味では、「アントレプレナーシップ教育」つまり起業家精神を養う教育と重なる面もありそうだ。企業活動の成果として投資収益が獲得できるという基本的な捉え方が学べる。
筆者がこどもの頃、郵便局(現ゆうちょ銀行)の定額貯金は5%を超えるような金利を半年複利で提供していた。国の資金分配システムが金融の中心にあったからこそ実現していたとも捉えられるが、国民は金融知識を積極的に学ぶ必要性をあまり感じなかった時代とも言える。デフレからの脱却が進み、「金利のある世界」に回帰しつつあるが、仕組みが大きく変わった現代において国民は自身で適切な資産選択を行わなければならない。金融リテラシーの充実は家庭の「一大事」であるはずだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、円安・ドル高が止まらないのか?
中東情勢の混乱が続く中、円安と物価高・実質賃金低下の悪循環が継続するリスク
2026年04月16日
-
「過去最大の経常収支黒字」に潜む課題
企業の「海外で稼ぐ」姿勢を反映し、投資収益の寄与が拡大
2026年04月16日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
地域別にみた中小企業の資金調達環境
信用保証協会保証付き貸付の相対的市場シェアに着目した競争圧力の検討
2026年04月15日
-
ホルムズ海峡封鎖で変わる世界地図—改めて問われる「成長投資」とは?
2026年04月17日

