パーシャル・スピンオフとは
2023年10月18日
パーシャル・スピンオフについて、聞いたことはあるだろうか?そもそもスピンオフとは何だろうか。
スピンオフとは、社内の事業部門を切り出し、独立させることであり、切り出した後も株主(または親会社)との資本関係は継続(子会社化)するものである。
スキームとしては、下記のような手法が考えられる。
①A社がB事業を分社化し、B社をA社の子会社とする。
②B社株式をA社株主に現物配当する。
③結果として、A社株主は、A社株式・B社株式両方を保有。
スピンオフの目的としては、社内の一事業として置いておくよりも、切り出すことで事業の成長や、事業価値の向上につなげること等が考えられる。
スピンオフのメリットとして、コングロマリット・ディスカウント(同じ業種の専業企業に比べて、多角化している企業の企業価値がマーケットにおいて低く評価されていること)の解消等が挙げられる。
スピンオフ税制の整備(2017年)や、「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」(経済産業省)の公表(2020年)により、事業ポートフォリオ経営の重要性への認識が高まり、スピンオフが注目されるようになってきた。
上場企業においては、コシダカホールディングスが、スピンオフ税制適用の第一号となった(フィットネスの「カーブス」を分離)。
スピンオフ税制は、100%の分離を前提とするものであり、スピンオフ元親会社に子会社株式を一部残すパーシャル・スピンオフは、課税対象のままであった。しかし、100%株式を手放すスピンオフは、①スピンオフ会社が元親会社のブランドやシステムを利用したい、②元親会社がスピンオフ会社に一定の資本関係を残したい、③元親会社がキャピタルゲインを得たい、等のニーズに応えるものではなかった。
スピンオフ税制の適格要件が、今年4月から緩和され、パーシャル・スピンオフにおいても、一定の要件を満たせば、課税対象外となった。これにより、スピンオフ親会社は、スピンオフ会社株式の20%未満であれば保有できることになった。
ソニーグループが5月18日に、パーシャル・スピンオフ税制を活用し、金融子会社の分離を検討すると公表した。今後、他会社の更なる活用が期待される。
スピンオフの目的を明確にし、メリットを享受できるように、組織・機能・ガバナンス等を整えていく。ビジネス面の検討の他に、法務・会計・税務・人事・システム面の検討も欠かせない。だからこそ、パーシャル・スピンオフのような形態も検討をしていくことが有効ではなかろうか。
スピンオフを含む事業再編を意義あるものにし、その効果を確実に得ていくために、豊富な知見を有する、コンサルティング会社の活用は、非常に有効な手段となる。
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- 執筆者紹介
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コーポレート・アドバイザリー部
主任コンサルタント 真木 和久
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