老いる日本の歴然とした課題

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2023年09月04日

  • 調査本部 常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準

7月に厚生労働省から2022年の国民生活基礎調査が公表された。2022年は3年ごとの大規模調査年にあたる(前回のそれは2019年)。

世帯構造に関する結果を見ると「65歳以上の者のいる世帯」が2,747万世帯となり、世帯総数の5割を初めて超えた。このうち「高齢者世帯」(65歳以上の者のみで構成する世帯等)は1,693万世帯であり、世帯総数の3割を初めて超えた。また、「65歳以上の単独世帯」は873万世帯となり、これまた「65歳以上の者のいる世帯」の3割を、「高齢者世帯」の5割を初めて超えた。

健康状態を確認すると、傷病で通院している人の割合は、2019年調査と比べて60歳未満は低下している一方、60歳代や70歳代で上昇している。また、高齢者世帯の61.5%には要支援または要介護と認定された者がいる。65歳以上の要介護者等を同居人が介護しているケースでは、全世帯のベースで63.5%が介護者も65歳以上である(75歳以上同士は35.7%)。

現在、生涯に費やされる医療費は1人当たり約2,700万円だが、その4割は75歳を過ぎてから必要になる金額だ。また、75歳以上全体ではその3割が、85歳以上全体ではその6割が要介護認定を受けている。以前と比べて高齢になっても身体的な若さを保持するようになっていたり、前期高齢者の間は働き続けるケースが増えたりはしているが、今後は後期高齢者の人数がますます増えていく点に課題がある。

8月には、2021年の所得再分配調査も厚生労働省から公表された。この調査も概ね3年ごとに実施されているが、コロナ禍の影響を受けて1年遅れた(前回調査は2017年)。

世帯員単位ベースで所得格差を示すジニ係数を時系列で見ると、当初所得(稼働所得や財産所得等の金額)では格差が拡大傾向にあるが、再分配所得(当初所得から税金や社会保険料を差し引き、社会保障給付を加えた金額)ではほぼ横ばいである。それだけ再分配が拡大していることになるが、2021年における格差の改善度は、税で6.1%、社会保障で31.8%である。

世帯員が75歳以上の階級に限れば、改善度は税で4.1%、社会保障で46.7%であり、再分配の大部分を担っているのは高齢者向けの社会保障であることが鮮明である。再分配係数(再分配所得から当初所得を差し引いた金額を当初所得で割った割合)は、60歳未満の世帯員はいずれの年齢階級でもマイナスであり、他方で60歳代前半は4.3%、60歳代後半は55.6%、70歳代前半は103.3%、75歳以上は159.4%となっている。

社会の活力を維持・向上させ、また、誰もが自身が理想とする人生をまっとうできるようにするためには、これほどまでの超高齢化を前提とはしていなかった仕組みやルールを着実に見直していく必要がある。その代表格は社会保障制度であり、手をこまねいていれば眼前で強烈に進む超高齢化に日本が押しつぶされかねない。従来型社会保障の肥大ではないメリハリのある社会保障システムを、デジタル技術を徹底導入しながら構築しなければならない。

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鈴木 準
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