地方銀行の越境再編

その土台にある地域経済圏の再構築

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サマリー

◆地方銀行の再編は第二地方銀行の集約過程でもある。1990年末に132行存在した地方銀行は、2025年には97行に減少し、減少数のうち32行が第二地方銀行である。集約形態では、地域一番行による吸収・営業譲渡や、小規模行同士の合併が多く見られるが、中には「県内越境」、すなわち地盤とする地区経済圏が異なる銀行同士が合併し、地区有力行が営業エリアの県域拡大を図るケースも存在する。背景には地域経済の県域一体化、県都への一極集中がうかがえる。

◆少数だが、県域を越えた越境再編の事例もある。事例に共通するのは、県域を越えた地域ブロック経済圏の存在である。福岡市や大阪市を中心とする広域経済圏は文化的・経済的な一体性が高く、拠点都市の求心力も強い。地域ブロック経済圏における県域経済圏の越境は、県域経済圏における地区経済圏の越境と相似している。

◆県都ないし地域ブロック拠点都市への一極集中の進行を前提とした地銀の越境再編が見込まれる。他方、地域経済圏には、資金決済網の安全を確保するためのリスク分担の関係が存在する点にも留意が必要だ。資金移動インフラ業の性質を持つ地域一番行に対し、二番手行が地域経済の金融仲介機能を補完する構図がある。地域経済の多様性と持続可能性を支える視点に立った適切な検証、これを踏まえた制度・政策面のフォローアップが求められる。

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