2025年07月11日
サマリー
◆地方銀行の再編は第二地方銀行の集約過程でもある。1990年末に132行存在した地方銀行は、2025年には97行に減少し、減少数のうち32行が第二地方銀行である。集約形態では、地域一番行による吸収・営業譲渡や、小規模行同士の合併が多く見られるが、中には「県内越境」、すなわち地盤とする地区経済圏が異なる銀行同士が合併し、地区有力行が営業エリアの県域拡大を図るケースも存在する。背景には地域経済の県域一体化、県都への一極集中がうかがえる。
◆少数だが、県域を越えた越境再編の事例もある。事例に共通するのは、県域を越えた地域ブロック経済圏の存在である。福岡市や大阪市を中心とする広域経済圏は文化的・経済的な一体性が高く、拠点都市の求心力も強い。地域ブロック経済圏における県域経済圏の越境は、県域経済圏における地区経済圏の越境と相似している。
◆県都ないし地域ブロック拠点都市への一極集中の進行を前提とした地銀の越境再編が見込まれる。他方、地域経済圏には、資金決済網の安全を確保するためのリスク分担の関係が存在する点にも留意が必要だ。資金移動インフラ業の性質を持つ地域一番行に対し、二番手行が地域経済の金融仲介機能を補完する構図がある。地域経済の多様性と持続可能性を支える視点に立った適切な検証、これを踏まえた制度・政策面のフォローアップが求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
貸出先業種でみた地銀・信金の違い
再編後の地域経済エコシステムにおける中小企業金融の担い手
2022年03月02日
-
経済圏別の地域金融機関シェアの試算
中小地方都市で存在感を示す信用金庫
2018年09月07日
同じカテゴリの最新レポート
-
ステーブルコイン推進へ舵を切る米国(後編)
GENIUS法案は如何にして米ドルの支配的地位を補強するか
2025年06月13日
-
ステーブルコイン推進へ舵を切る米国(前編)
ステーブルコインの概要と現況
2025年05月19日
-
日本のウェルス・アセットマネジメントビジネスの方向性
~米欧と同じ付加価値を追求しているか~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日