TOPIX見直しに関する第二幕の議論

RSS

2023年08月18日

TOPIXの見直しに伴い、その構成銘柄数の約2割に当たる493社のTOPIXにおける構成比率(ウエイト)が2022年10月から徐々に引き下げられている。流通株式時価総額が100億円に満たない銘柄は「段階的ウエイト低減銘柄」とされているためで、493社はそれに該当する。

2023年10月には見直しにかかる最終判定が行われ、流通株式時価総額100億円未満かつ年間売買代金回転率0.2回転未満の銘柄はウエイト引き下げが継続され、2025年1月にTOPIXから完全に除外される。TOPIX構成銘柄である上場会社からすれば、TOPIXに連動するリターンを目指すETFや投資信託に組み入れられていた自社の株式が売却されることを意味する。

この見直しを第一幕とすれば、実は第二幕とも言うべき更なる見直しが予定されている。旧市場第一部銘柄であったプライム市場とスタンダード市場の銘柄を中心に現在は構成されているTOPIXに、スタンダード市場やグロース市場への新規上場銘柄を追加したり、選定銘柄数に上限を設けたりするといった定期的な入替が検討されている。TOPIXを算出・公表するJPX総研で検討が行われており、広く市場関係者から意見を募集するコンサルテーションを経て、見直し内容が決定される予定である。なお、見直しの決定とそれが実施される時期ともに未定である。

TOPIX見直しの第二幕について、市場関係者による最近の発言は注目に値する。2023年4月に行われた金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第28回)」では、メンバーから①TOPIX構成銘柄数の上限を決める、②成長性、資本収益性を重視した上で流動性を構成銘柄選定で考慮する、③構成銘柄数を400、500に絞る、④新たな指数の導入ではなく、TOPIXそのものを変革する、という旨の発言があった。TOPIXの構成銘柄になるために上場会社に競わせることで、上場会社に企業価値向上に取り組むインセンティブを導入することが目的であるという。

一方で、2023年6月に行われたJPX総研の「指数アドバイザリー・パネル第三回」では、委員から、投資目的で利用されるTOPIXの役割を踏まえることが重要であり、例えば、構成銘柄を200銘柄にすれば、競争が働いて望むような結果に本当になるのか冷静に考える必要があるという趣旨の発言があった。他の意見としては、TOPIXを投資対象として適した指数としていく検討においては、市場全体の底上げも重要とされた。また、上場会社全体の底上げには良い銘柄で構成するという指数のルールではなく、上場制度のルールを一層洗練させることで対応すべきという趣旨の意見もみられた。

このように市場関係者の意見はバラエティーに富んでおり、更なる議論が必要だろう。第一幕の見直しが終わるのが2025年1月であることを踏まえれば、議論の時間はまだある。しかし、「鉄は熱いうちに打て」という諺がある。東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請などで日本の株式市場が国内外の投資家に注目されているうちにスピード感を持って議論を進めることの意義は大きい。上場会社の企業価値向上に向けて、改革のモメンタムが強まることを期待したい。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

神尾 篤史
執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 神尾 篤史