洗濯機の修理で考えたサービス業の需要平準化

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2023年07月07日

自宅の洗濯機が故障した。洗濯機は動かないと生活に大きな支障をきたす家電の一つだ。1度は自宅へ修理に来てもらったが、部品がないとの理由でその場では直せず、結局、修理が終わるまでに1週間を要した。その間、私は家族が出した重い洗濯物を持って、近所のコインランドリーに何度か足を運ぶという不便を強いられた。

修理には立ち合いが必要だ。土日に修理依頼をしたいところだが、みんな同じことを考えるので、土日を選ぶと予定がだいぶ先になってしまう。洗濯機の場合は一刻も早く対応してほしいので、平日を選択しようとすると、仕事をしていれば休暇を取らなければいけない。夫婦が共働きの場合はどちらかが休暇を取れればよいが、必ずしも都合の良い日に休めるとは限らない。

しかし、コロナ禍で在宅勤務が勤務形態の一つとして定着するようになり、今回は仕事を休まずに昼休みを使って平日に洗濯機の修理に立ち会うことができたため、比較的早く通常の生活に戻ることができた。在宅勤務は自宅で仕事に集中できるメリットだけでなく、時間休や昼休みと組み合わせれば生活上の雑事も効率よくこなすことができるので、生活の質も上がると個人的には考えている。

ただそれだけでなく、一部のサービス業に従事する人々にも恩恵があるだろう。宅配便の受け取りなどもそうだが、在宅勤務の普及によって土日や夜間に作業が集中するリスクを避けることができれば、サービス業における需要平準化を図ることができるからだ。製造業とは違い、在庫調整ができないサービス業では需要変動が大きくなりやすい。一方で、労働や資本といった生産要素は需要に応じて短期的に調整するのが難しいために、無駄にそれらを余らせる、もしくは需要を取りこぼす、といったことが起こる結果、サービス業の生産性が低くなるとの研究がある(※1)。需要平準化には需要閑散期(繁忙期)に価格を下げたり(上げたり)、またはネットを通じて取引のタイミングを分散するなどの供給側の対応が一般的だが、そうした対応が難しい場面では、在宅勤務の例のように、需要側で特定の曜日や時間帯に偏りやすい需要を平準化できる点も評価されてよいのではないか。

日本ではサービス業の生産性向上が喫緊の課題と言われている。それは供給側の努力のみでは難しい面もある。勤務形態といった我々の生活様式の変化を通じてでも、サービス業の生産性向上に貢献できる部分があるように思われる。そうした取り組みも意外に重要なのではないかと、今回の修理の様子を見ながらふと考えた。

(※1)森川正之[2008]「サービス業における需要変動と生産性-事業所データによる分析-」, RIETI Discussion Paper Series 08-J-042, 独立行政法人経済産業研究所.

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溝端 幹雄
執筆者紹介

経済調査部

主任研究員 溝端 幹雄