ChatGPTはリサーチよりも就活に有利?
2023年03月10日
英国のハント財務相は、1月27日に英国のイノベーション振興に関し、今話題のChatGPTを利用して作成した原稿をもとに演説した。筆者の住む街が地元で、たまに商店街で見かけるハント財務相の演説ということもあって、筆者はこの政策原稿に当初から注目していた(英国内に次代のシリコンバレーを生み出すため、主要成長セクタ—に英国への投資を促すというのが演説の概要である)。すでにご存じの方も多いと思うが、ChatGPTは大規模言語モデルと呼ばれるAIを利用した自動応答システム(チャットボット)である。数十億語もの大規模なテキストデータを学習させたものであり、利用者がChatGPTのプロンプトボックスに質問を書き込むと、ほぼ即時に回答が返ってくる。
ChatGPTを開発したオープンAIは、2015年に創立され、テスラやツイッターを率いるイーロン・マスク氏が共同設立者に名を連ねている。3年前に基調となる技術、すなわち高い精度で、ある単語の次に続く単語を予測し、オートコンプリートのように自動で文章を生成する “GPT-3”を開発した。ChatGPT は11月30日に一般公開されると、わずか5日で利用者が100万人に達した。ネットフリックスの利用者が100万人に達したのがサービス開始から3年だったことと比較すると、驚異的なスピードで利用が広がっていることがわかる。今では何百万人もの利用者が、同時にサイトにアクセスするフル稼働の状態にあり、サーバーがこれ以上のトラフィックを処理できないとのメッセージも頻繁に目にする。オープンAIはライバル企業からスピード競争の圧力もあり、ベータ版での公開に踏み切った。しかし、グーグルが 同様のチャットボット「Bard」の公開を一部利用者に限っているように、ライバル企業がまだAIを利用した自動応答システムを一般公開できていないことを考えると、オープンAIのギャンブルは成功したといっても過言ではないだろう。
無論、ハント財務相のChatGPT利用は、先端技術の活用を強調する上では素晴らしい試みである。ただ(AIを利用しているとはいえ)一国の政策がチャットボットによって、あまりにも簡単に作成されてしまうという考えを招く点では不安材料といえる。政策立案者やリサーチ人材の将来への暗雲と考える人もいるだろう。実験ではChatGPTはMBA修了や、司法試験や医師免許試験の合格基準点を突破したため、教育分野でもその利用が物議を醸している。ChatGPTが書いたエッセイであることを見抜けず、教員が最高評価をつけたことで、エッセイを宿題にしなくなった英名門私立校もある。
一方で、現時点で最もChatGPTが有用なのは就職活動といわれている。履歴書や応募書類、エントリーシートのような形式が重視される書類は、ChatGPTが得意とする分野であり、英国では自己PRや志望動機を作成するなどの面談の準備にも活用されているという。
リサーチ人材はすでにAIとの競争に突入しているが、今年の新卒採用では人事担当者がどこまでChatGPTの生成文章を見抜けるかが試されるのかもしれない。
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