米国の景気後退は不可避か?
2023年02月13日
昨年来の米国ではFRBの大幅な利上げが続く中、景気後退観測が高まった。例えば、ニューヨーク連銀が公表する1年後の景気後退確率(米10年物国債と3カ月物財務省証券の利回り差に基づく試算値)は22年12月時点で47.3%と、82年8月以来約40年ぶりの高水準となった。また、米コンファレンス・ボードが発表する景気先行指数(LEI)は22年12月に前年同月比で6.0%低下した。低下は6カ月連続で、低下幅は6カ月間で最大となった。米労働省が発表する週間失業保険統計やS&P500種株価指数など10の指標から計算されるLEIが前年同月比で5%以上低下すると、過去の米国は100%の確率で景気後退に陥った。実際に、コンファレンス・ボードは「(22年12月のLEIは)米国経済が近いうちに景気後退入りすることを示唆している」と指摘した。
米国で景気後退観測が高まる一方、IMFは1月30日に改定した世界経済見通しで、23年の世界の実質GDP成長率を22年10月時点の予測から0.2%ポイント上方修正した。23年の予測を上方修正するのは1年ぶりである。「ゼロコロナ」政策を解除した中国の成長率を0.8%ポイント上方修正するなど、米国・ユーロ圏・日本を含めて幅広い国や地域の成長率を上方修正した。IMFのチーフエコノミストは記者会見で、中国の成長率が1%ポイント上がれば他の地域に0.3%ポイントの波及効果があると説明し、「これは非常に大きい」と強調した。また、IMFは報告書で「世界の約84%の国で23年のインフレ率が22年を下回ると予想される」として、世界的にインフレが鈍化する可能性を指摘した。
IMFが世界経済見通しを上方修正した直後、2月1日のFOMCでFRBは0.25%の利上げを決めた。利上げ幅は2会合連続で縮小し、通常のペースに戻った。また、FRBのパウエル議長はFOMC後の記者会見で「ディスインフレ(インフレ鈍化)のプロセスが始まった」と述べた。ディスインフレの進行に伴ってFRBが3月または5月のFOMCで利上げを停止すれば、米国の景気後退は不可避でも、短期で終わる可能性があろう。
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