スタートアップのM&A

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2022年10月17日

  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 真木 和久

事業承継の解決策として、M&Aが使われるケースが増えている。例えば、後継者のいない優良な中堅企業が、大企業からのM&Aを受け入れた場合、後継者人材の確保や従業員の雇用を守ることができる等、M&Aが後継者問題の有力な解決手段になることは、イメージしやすいだろう。それでは、スタートアップの場合は、どうだろうか。

スタートアップは、一般には、起業や新規事業立ち上げをすることであるが、特に革新的なアイデアで短期間で成長する企業とされている。具体的には、初期のGAFAやユニコーン企業が挙げられる。ただ、生き残る場合もあれば、倒産等により消滅してしまうケースも少なくない。

スタートアップは、積極的な投資が必要な場合が多く、初期段階では、VC(ベンチャー・キャピタル)、その後は、IPO(新規株式公開)により、資金を獲得するケースが多い。そのため、中長期的には、IPOを志向するケースが多い。

しかし、IPOを行うには、内部統制システムの構築等、経営体制の整備に多大なコスト・時間が必要となる。また、上場できるか否かは、株式市況等の市場環境に左右されることもある。IPO後には、社会的責任を担う公的企業となるため、経営に一定の制約がかかる。

一方、M&Aの場合は、どうだろうか。創業者がキャピタルゲインを得られることは、IPOと同じである。しかし、事業の拡大に対して、IPOは、全て自前で管理体制等の整備をやらなければならないが、M&Aの場合は、買い手のサポートを得られる可能性が高い。買い手である大企業にとっても、イノベーションの創出等、自社のみで難しい課題解決に取り組むよりも、可能性のあるスタートアップへの資本参加は、検討に値するかもしれない。

スタートアップを取り巻く環境も変化してきた。我が国の持続的な成長のために、スタートアップの重要性が再認識される状況になってきている。

「スタートアップとの事業連携に関する指針」(公正取引委員会・経済産業省)の公表(2021年)により、オープンイノベーションの観点から、スタートアップが注目されるようになってきた。また、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(内閣官房)の発表(2022年6月)もあり、国によるスタートアップへの後押しも今後加速することが期待される。

欧米においては、スタートアップがIPOに加えて、出口として、M&Aを選択するケースも多いと聞く。日本においても、スタートアップの出口戦略としてのM&Aが今後、増えていくのではないか。スタートアップのM&Aは、大企業が直接投資する場合もあれば、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を経由することもあるかもしれない。また、最初は、少数株主から入って、いずれかのタイミングで、過半数を取得することも考えられる。

スタートアップについて、M&Aを含む事業再編を意義あるものにし、その効果を確実に得ていくために、豊富な知見を有する、外部の第三者機関であるコンサルティング会社の活用は、非常に有効な手段の一つとなる。

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真木 和久
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