租税特別措置の適用期限はどうあるべきか

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2022年10月03日

  • 斎藤 航

8月末に、各省庁の税制改正要望が出そろい、例年12月中旬頃の税制改正大綱の発表に向け、税制改正の議論が本格化していく時期になってきた。議論される税制には、DX投資促進税制などの租税特別措置も含まれている。

租税特別措置とは、特定の政策目標を達成するため、税額を減免あるいは増徴する措置のことであり、通常の税法(法人税法、所得税法など)とは別に租税特別措置法という法律で規定されている。例えば、DX投資促進税制は、企業のDXを促進するため、DXにつながるソフトウエアなどの投資に税優遇を与える租税特別措置である。

課税には公平を原則とするという考え方があり、納税者の税金に対する負担能力を考慮した上で公平な納税負担を求めることが基本である。しかし、前述の通り、租税特別措置は政策目標のため税額を減免あるいは増徴するということで、公平の原則からいえば例外的な措置と捉えられる。従って、各租税特別措置が本当に必要なものなのか、あるいは、より有効なものになるように見直せないか、などの検討が求められるものである。

この点、令和4年度与党税制改正大綱では、「毎年度、期限が到来するものを中心に、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必要性や政策効果をよく見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行う。」とされており、平成27年度の大綱からほぼ同じ表現が使われている。与党としては、適用期限が近づいたものを中心に見直しを行っていくスタンスであることがわかる。

そして、この適用期限について、法人に適用される租税特別措置では、基本的に3年以内となっている。これは、2009年に当時の民主党政権で閣議決定された「平成22年度税制改正大綱」の「租税特別措置の見直しに関する基本方針」の考えが踏襲されているものと思われる。

一方で、特に企業は租税特別措置を受けるかどうかの意思決定に時間がかかることや、例えばDX投資促進税制など租税特別措置によっては税優遇措置を受けるまでに手続き上かなり時間がかかるものもある(※1)と想定される。見直しまでの時間が長いほど、(既存の措置の内容をもとに)その措置を受けることによる効果を企業が把握しやすくなり、企業にとって適用を受けるか否かの検討がしやすいともいえる。

つまり、租税特別措置の適用期限は、短期間にすれば短いサイクルで見直しがしやすい一方で、長期間にすれば企業などは使いやすいという板挟みにあっている。一案として、DXなど政府・与党が長期的に重要と考える分野については見直しまでの期間をやや長くし、それ以外は短いサイクルのままにすることも考えられる。租税特別措置の適用期限はどうあるべきか、考えていく必要があるだろう。

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