「スポーツの秋」と「じぶんの健康経営」

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2022年09月07日

9月に入った。まだ暑い日は続いているが、これから徐々に気温が下がり、日中も外で活動しやすくなってくるだろう。少し気が早いが、11月にはサッカーのワールドカップが始まる。今年は例年以上に熱い「スポーツの秋」になるのではないだろうか。

一方、私たちは新型コロナウイルス感染拡大の影響で運動不足が続いている。タニタの調査(「生活習慣の変化とダイエットに関する調査2022」)(※1)によると、コロナ禍の中で、スポーツ・運動する量が「減った」との回答が32.6%(「増えた」は7.5%)、また体重が「増えた」とする回答が33.7%(「減った」は10.6%)と、それぞれほぼ3人に1人が該当している。頭の中では「健康維持のためにも運動は大事」と分かっていても、仕事が夜遅くまで続いて疲れてしまう人や、運動が苦手な人などにとっては、運動量を増やすハードルが高いようである。

もちろん、体重増加がすべて問題だというわけではない。しかし、長く健康を維持するには、肥満などのような体重増加は避けたいところである。海外の調査の例をみると、BMI(<体重[kg]>÷<身長[m]の二乗>)が25未満の人に比べ、体重が増えるほど健康寿命が短くなるとの報告がある。年々増加する医療費や介護費の伸びを抑制するためにも、生活習慣病等の予防・早期治療を通じた重症化予防は重要だ。また、長く健康でいられれば、定年後に働くこともできるだろうし、働くことで老後の生活に金銭的なゆとりも生まれてくるだろう。やはり健康は大事にしたい。

タニタの調査からみえる個人の変化とは対照的に、企業では従業員の健康管理を経営的に考え、戦略的に実践しようとする例が増えている。近年では、従業員の活力や生産性の向上を通じて業績を高めることに経営層の意識が高まっており、「健康経営®」や「人的資本経営」といった言葉を新聞などで目にする機会が増えている。経済産業省が実施している健康経営度調査の回答数も、第1回(2014年度)の493件から第8回(2021年度)には2,869件へと約6倍に増え、上場企業に限れば4社に1社が回答している。

健康経営度調査の評価項目の中には、健診・検診等の活用、保健指導などある。食生活の改善に向けた取り組み、運動機会増進に向けた取り組みなど、生活習慣の予防や改善を促す動きはますます広がりそうだ。

しかし、結局は個々人が能動的に行動を起こさなければ、せっかくの仕組みの効果が薄れてしまう。まずは、私たち自身の意識と行動の変化が必要だ。手始めにスマートフォン(スマホ)と体重計を用意して、計測の習慣をつけてはどうだろうか。先のタニタの調査によると、体重を計測するのが月1回以下の割合が半分近くにものぼっているようだ。入力が面倒であれば、スマホと連動できる体重計(多くは体重や体脂肪率なども計測できる体組成計)を活用するのもよいだろう。意識や行動を長続きさせるために、歩数に応じて換金性のポイントが付与されるアプリを入れたり、スマートウォッチも買って1時間以上座っていたらリフレッシュを促される機能を活用したりするのも効果がありそうだ。

「スポーツの秋」を機に、「じぶんの健康経営」に取り組むのはどうだろう。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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中村 昌宏
執筆者紹介

金融調査部

主席研究員 中村 昌宏