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ゼロコロナ政策への固執から透ける中国の政治リスク

2022年06月23日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

なぜ中国はこれほどかたくなにゼロコロナ政策に固執するのであろうか。

2022年4月8日付けの人民日報は「我が国は、国土が広大で、各地の医療衛生条件に差異があり、ワクチン接種にも(筆者注:都市・農村、年齢層など)集団の間でバランスを欠き、同時に(同:重症化リスクが高く接種率が相対的に低い)高齢者の人口が多い。このような状況下で、我が国の感染状況に基づくと、現段階ではゼロコロナ政策が最も優れた選択となる。短期間でゼロコロナを実現することが最も経済的で有効な防疫戦略である」とした。農村の医療基盤の脆弱性や中国製のワクチンが不活化ワクチンでオミクロン株への有効性が低いことなどが「ウィズコロナ」への転換を妨げている可能性が高い。さらにいえば、習近平総書記がゼロコロナ政策の堅持を繰り返し述べていること自体が、方針転換を難しくしていることも大きい。中国の感染症研究の権威である鍾南山氏は、ゼロコロナ政策は長期的に持続可能ではない旨を発言したが、この発言はなかったことにされた。政治が科学(専門家)の口を封じたのである。政治が何よりも優先されるという中国が抱えるリスクの一端が垣間見える。

上海市は3月28日以降、1カ月半以上にわたり極めて厳格なロックダウンを実施したが、実は上海市は直前まで、その回避に奔走していた。ロックダウンともなれば経済への悪影響は甚大であり、最後の最後まで感染拡大抑制と経済活動の両立を図っていたのである。しかし、中央から習近平総書記の意を受けた孫春蘭副首相が上海市入りし、ロックダウンを断行した。経済が失速しただけでなく、事前の準備期間がなかったために食料の調達・確保などがうまくいかずに餓死者の存在がささやかれるなど、大きな混乱を招いた。

こうした状況下で、地方政府は中央の方針を金科玉条の如く守ろうとする。各地方政府がゼロコロナ政策に過剰に反応していると思われるケースが多々ある。例えば、中国民族系自動車メーカー・奇瑞自動車の本拠地のある安徽省蕪湖市は、1人の陽性者が出たことで主要地区に厳しい移動制限を講じたとされる。明らかにいきすぎだ。

中国は5年に一度の共産党大会を控え、政治の季節の真っただ中にいる。10月か11月の開催と目される第20回党大会は5年間の施政方針を決定し、直後の中央委員会第1回全体会議で新指導部が選出される。中国外では、習近平総書記の3選が盤石なのか疑問視する指摘がある。筆者はその成否を論ずる材料を持たないが、少なくとも習近平一強体制のさらなる強化はリスク要因だと見ている。強権政治の負の側面が際立ってきているのは既に述べた通りである。改革・開放政策を重視する立場の人物や実務派など様々な人材が方針・政策を練り上げていく、バランスの取れた体制の方が、政策が偏りにくくなると考えている。現指導部と党長老との対話の場である、今夏の北戴河会議が体制固めの正念場であり、これからしばらくは中国の政治動向にも注目したい。

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経済調査部
主席研究員 齋藤 尚登