銀証ファイアーウォール規制の見直しで上場企業等に求められる対応
2022年06月07日
2022年6月22日に、銀行と証券会社の間のいわゆるファイアーウォール規制の見直しの適用が開始される。ファイアーウォール規制は証券会社等に課される規制だが、この見直しにより、上場企業等は7月下旬頃までに一定の判断が必要になる。
ファイアーウォール規制とは、証券会社とグループ内の銀行等との間で、顧客の非公開情報の共有を制限する規制である。ただし、顧客が共有に同意していれば、顧客情報の共有は可能である。また、顧客が法人の場合、証券会社等があらかじめ顧客に情報提供の停止を求める機会を提供する「オプトアウト」という方法も認められている。オプトアウトでは、顧客が情報提供の停止を求めてこなければ、証券会社と銀行等との間で顧客情報の共有が可能になる。
ファイアーウォール規制について、昨年6月に金融審議会で見直しが提言され、今年4月に、顧客が上場企業等である場合について簡素化されたオプトアウトを認める改正が行われた。
従来のオプトアウトは、顧客に対して個別に情報提供の停止を求める機会を提供することが必要である。一方、簡素化されたオプトアウトでは、個別に情報提供の停止を求める機会を提供する必要はなく、あらかじめ証券会社や銀行等のウェブサイトに情報共有をする旨等を掲載していればよい。この場合に、上場企業等から情報提供の停止が求められない限り、情報共有が可能となる。
ただし、上場企業等が情報提供の停止を求めるか判断するための期間を確保するため、実際に情報共有が可能になるのは、ウェブサイトに情報共有する旨等を掲載してから、1カ月間程度経過した後である。今回の改正は6月22日から適用されるため、上場企業等は、早ければ7月下旬頃までに、情報提供の停止を求めるか否かを判断しなければならない。
簡素化されたオプトアウトが適用される顧客には、上場企業のほか、非上場でも債券発行等により有価証券報告書を提出している会社、IPO予定会社や一定の機関投資家、さらにはそれらの子会社等も含まれる。また、改正の適用日にこれらに該当していなくても、将来、該当する場合もあり得る。例えば、改正の適用日時点では非上場の企業が、将来、上場アドバイザリー契約を締結するなどしてIPO予定会社に該当した場合、その時点から1カ月程度以内に、情報提供の停止を求めるか判断する必要がある。
ファイアーウォール規制の緩和に対しては、銀行に伝えた情報を証券会社に共有され営業活動に利用されるという懸念が指摘されている。自社の情報は自ら管理したいと考える上場企業等は、知らぬ間に自社の情報が金融グループ内で共有されてしまうことがないよう、7月下旬頃までに情報提供の停止を求めるか判断する必要がある。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 金本 悠希
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