ESG投信のウォッシュ問題
2022年05月24日
ESG投資は拡大の一途を辿っており、ESGを冠して運用される投資信託(以下、ESG投信)も増加している。しかし、ESG投信に対しては、一般的な投信との違いが不明確、ESG評価が適切ではないのでは、等の指摘があり、ESGウォッシュ(ESGを考慮していると謳いながら実際は考慮していないこと)が懸念されている。そもそも、ESG投信を謳いながら全くESGを考慮せず運用しているのであれば、顧客に虚偽や誤解を与える説明をしていることになり、投資家保護の観点から問題であることは論を俟たない。一方でESG投資の定義があいまいであることに起因するESGウォッシュ懸念への対応は難しい。
もとよりESG投資は特定の運用手法を指すものではなく、ESGの評価方法や投資判断への組み込み方には幅がある。ESGを総合的に評価するケースもあれば、ESGの特定の要素にフォーカスして評価するケースもある。武器やアルコールの製造・販売、石炭火力発電など、特定の産業や企業を投資対象から除外するネガティブ・スクリーニングもあれば、財務情報とESG情報を総合的に判断して運用するESGインテグレーションという手法もある。そのため、ESG投信と一言で言ってもその中身は千差万別となり「ESGを考慮したが、結果として一般的な投信と中身が似通った」「ESGを総合的に評価して組入銘柄を決定した結果、特定分野(例えば気候変動対応)への取り組みが遅れている企業がポートフォリオに入った」といったケースも起こり得る。
金融庁は2022年4月に「ESG関連公募投資信託を巡る状況」を公表し、資産運用会社に対する期待として、ESG投資を行う体制の整備やESG人材の確保、顧客に対する適切な情報開示などを挙げた。これらは資産運用会社が「自社のESG投信はESGウォッシュではない」と主張するために必要な要件ともいえる。特に重要なことは、顧客に対する適切な情報開示だろう。そもそも投資家によってESGに対する期待は様々である(リスク管理の観点からESGを考慮したい、ESGのビジネス機会に注目したい、環境問題の解決に貢献したい、etc.…)。投資家の投資判断に必要な情報が資産運用会社から十分に提供されていけば、ESG投資の定義のあいまいさに起因するESGウォッシュ懸念は解消されていくのではないだろうか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
金融調査部
主席研究員 太田 珠美
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、円安・ドル高が止まらないのか?
中東情勢の混乱が続く中、円安と物価高・実質賃金低下の悪循環が継続するリスク
2026年04月16日
-
「過去最大の経常収支黒字」に潜む課題
企業の「海外で稼ぐ」姿勢を反映し、投資収益の寄与が拡大
2026年04月16日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
地域別にみた中小企業の資金調達環境
信用保証協会保証付き貸付の相対的市場シェアに着目した競争圧力の検討
2026年04月15日
-
ホルムズ海峡封鎖で変わる世界地図—改めて問われる「成長投資」とは?
2026年04月17日

