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ウクライナ問題の背景にある「ポピュリズム×権威主義」の台頭

2022年05月02日

金融調査部 主席研究員 内野 逸勢

ロシアのウクライナ問題を巡る西側諸国との争いは、民主主義と権威主義の争いともいわれている。当然ながらロシアの「力による現状変更」は決して許されることではないが、その争いの根本原因を多面的に捉えることが必要であろう。

ここでは、グローバリゼーションが生み出してきた構造的な問題に焦点を当てて考えていくこととする。そこでは、民主主義対権威主義という単純な構図ではなく、グローバリゼーションが発展する過程において、一国の独立した政策による解決が難しくなる中で、民主主義国と権威主義国を問わず、程度は様々であるが「ポピュリズム×権威主義」(ポピュリズムを活用した権威主義的な政体)が台頭してきたという課題が垣間見える。その背景には、モノやカネの自由なグローバルな移動という自由主義を軸とするグローバリゼーションを支えてきた国々の中で、明確な理由を持たぬままに、その恩恵を享受できないと感じている国民が増えていることがある。

グローバリゼーションの構造的な問題とは、例えば、カネやモノの自由な移動というグローバリゼーションの恩恵を受けるために、市場の信認を維持し、大国の政策に追随する必要が生まれ、それが時に自国の産業競争力の維持、強化などの政策目標と矛盾することである。つまり、各国の独立的な経済政策の有効性が低下する可能性が高まる。さらに、ブレトンウッズ体制という戦後のパワーバランスの中で決まった国連常任理事国などの構成が、グローバル・ガバナンスが紛争解決に有効に機能する上で障害になっている問題も、それに該当しよう。今回のウクライナ危機などの有事の際にも、その機能不全が明確に表れているといえよう。

その結果、米国第一主義のトランプ大統領を生み出した米国、今回の大統領選で極右政党への支持が拡大したフランスなど自由主義を重んじる西側諸国でも、これまで盤石と考えられていたグローバリゼーションを支えてきた多数派の考え方=民主政治への懐疑が高じ、ポピュリズムが台頭する素地が築かれてきた。そしてそれは時に保護主義を助長し、権威主義的政体を勢いづける機能を果たすようになってきた。

確かに、ウクライナの問題では、ロシアという権威主義国家が「力による現状変更」に対する如何なる国際的な批判をもいとわない強い指導力を演出し、内外に誇示しているのも、一種のポピュリズムの究極的な姿といえよう。しかし、それ以前にグローバリゼーションの構造的な問題による「ポピュリズム×権威主義」の台頭は西側諸国においても顕著であったことを重大な課題として認識する必要があろう。

このように考えを巡らせると、ウクライナ問題をはじめとするグローバルな問題を根本的に解決するためには、単なる民主主義と権威主義の争いに決着をつけるというよりも、前述した“グローバリゼーション”の構造的な問題を多くの国が共有し、現在のグローバル・ガバナンスの再構築と、自由主義を掲げる西側諸国を含めた国々の健全な“民主政治”を再強化することの両方が必要となるといえるのではないか。権威主義国との争いに勝つだけではなく、グローバリゼーション、民主主義の“内なる敵”の戦いに勝たないと本当の意味での解決は見えてこない。

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内野 逸勢

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