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ウクライナを巡るロシアと欧米等の我慢比べ ~ 金の切れ目が縁の切れ目?

2022年03月30日

経済調査部 シニアエコノミスト 近藤 智也

約1週間前のレポートの中で(※1)、ロシアのウクライナ侵攻に対する欧米等による経済制裁について、“その解除の見通しは相当な不確実性を伴う。何をもって欧米が制裁を段階的にでも緩和していくかは不透明であり、早期に制裁解除の環境が整う確率は低いと考えられる。なぜなら、全面解除が早期に実現するには、ロシア軍が撤退しウクライナに詫びを入れることが欠かせないが、現在の戦況や、ロシアのプーチン大統領のこれまでの一連の発言や行動を踏まえると、容易には想像しがたいからだ”と記した。

ウクライナを巡る情勢は刻々と変化しているが、3月26日、米国のバイデン大統領はポーランドにおける演説の最後で、プーチン大統領を“全くもって、この男は権力の座にとどまることはできない”と言及した。バイデン大統領が既にプーチン大統領を“戦争犯罪人(war criminal)”、“虐殺者(butcher)”と呼んでいた点を踏まえると整合的な見解だが、ロシア側の強い反発が予想され、制裁解除のハードルは上がったとみられる。また、英国のトラス外相は、“制裁は、完全な停戦と撤退、そしてこれ以上の侵攻がないという約束によってのみ、解除されるべき”と発言している。“完全”が意味するところ次第では交渉が難航する可能性があり、また町を破壊され住む場所を失った人々からすれば、当然ながら停戦・撤退だけでは不十分であろう。

いずれにせよ、経済制裁が長期化すると予想される中、ロシアと欧米等の我慢比べの様相が強まっていこう。当面は、人手(兵隊)不足や部品(武器弾薬)不足への対応が課題になるが、前者については、お金等で雇われた傭兵を別にすれば、命じられるまま他人の土地に土足で踏み込んだ側と、自分の土地を奪われまいと必死に守る側では、自ずと士気が異なる。債権者や輸出業者だけでなく、傭兵にしても、価値の下がった通貨での支払いに応ずるはずもなく、ロシアにとってドルやユーロ等の外貨は大事である。

ロシアの事業から撤退する方針を示した企業の他、物流が混乱し部材調達もままならない状況下で生産停止を余儀なくされる企業、あるいは、ロシアでビジネスを継続することへのレピュテーションリスクに晒されてサービス提供をストップする企業まで、ロシアとビジネス上の関わりを持つ外国企業は、多種多様な状況に直面している。イェール大学経営大学院によると、3月27日時点で、ロシア事業の何らかの見直しを表明した外国企業は450社を超えて増え続けている(約40社は従来と変わらず事業を展開)。外国企業による広範なビジネス活動の停止は、雇用面を含めてロシア経済に大きな打撃であり、嗜好品やサービス不足に対して国民の不満が高まるかもしれない。

一方、経済制裁の強化は、ロシアと結びつきが大きい国や企業ほど影響が大きく、地理的に近いロシアへのエネルギー依存度が高い大陸欧州は、米英に比べると、経済制裁の反動を受けやすい。エネルギーや農産物、鉱物資源等の価格は、コロナ禍からの脱却過程で上昇傾向にあったが、ウクライナ侵攻および経済制裁によって一段と上昇し、企業活動や個人消費に影響を及ぼすと見込まれる。今後、悪影響を緩和するために財政によるサポートが予想されるが、経済制裁が長期化するほど、財政的に余裕のある国とない国で格差が生じる可能性がある。従って、統一した行動が求められる欧米サイドでは、脱落国が出ないように、補助金ルールの緩和やエネルギーの融通等といったセーフティネットの構築が急がれる。

(※1)拙稿「欧州経済見通し コロナ禍の次はプーチン禍」(大和総研レポート、2022年3月22日)を参照。

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近藤 智也

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