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ジョブ型人事制度の検討にコーポレートガバナンス・コードの視点を

2022年01月25日

経営コンサルティング第二部 主任コンサルタント 小林 一樹

ジョブ型と呼ばれる人事制度が多くの関心を集めている。新聞などでもジョブ型の人事制度へ移行する企業の記事を目にするようになった。経済産業省による「人材版伊藤レポート」(※1)や、内閣府で議論されているヒューマン・ニューディール(※2)においてもジョブ型について言及されており、日本政府も制度の移行を後押しする動きがみられる。

ただし、既存の人事制度からジョブ型の人事制度へ移行することは容易ではない。「人に仕事をつけるのがメンバーシップ型、仕事に人をつけるのがジョブ型」とよく表現されるが、これまで日本企業の人事制度はメンバーシップ型が主流であり、ジョブ型に移行する場合は人材マネジメントの考え方が大きく変わる。また、メンバーシップ型かジョブ型かの二者択一ではなく、どこまでジョブ型の要素を取り入れ、どこまで既存の要素を残すのか、数ある選択肢の中で自社に最適な人事制度設計と運用方法を模索することになる。これ以外にもジョブ型への移行には様々な論点があり、移行の難易度は高い。しかし、それ以上に自社の人材マネジメントをより良くするためにジョブ型を検討したいという企業は多い。

ジョブ型への関心の高まりと並行して、2021年6月にコーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」)が改訂された(※3)。その補充原則4-11①に「取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。」と記載されている。改訂により取締役会及び各取締役に求める知識、経験、能力等の明確化が求められるようになった。

役員に求める知識、経験、能力等を明確にすると、そのような経営人材をどのように育成、選抜するかという従業員の人事制度の議論に発展する。しかし、従業員のジョブ型を検討している企業でも、経営人材の育成や選抜について、従業員と役員という階層の違いがあるせいか、一体的な議論があまりされていないようである。ジョブ型が中心の欧米でも、経営幹部は実はメンバーシップ型の働き方をしていると言われるように、ジョブ型の移行に目線が行き過ぎると、経営人材をどう育成し、どう選抜するかという視点が抜け落ちてしまうことが懸念される。CGコードでは、これ以外にも、中核人材の確保や後継者計画、人的資本への投資についても記載されており、ジョブ型を多面的に検討するための視点が盛り込まれている。

ジョブ型人事制度について解説した書籍なども多く出ているが、CGコードの視点も含めて解説しているものは少ない。ジョブ型を検討する企業に対し、CGコードの視点からも、多面的かつ一体的に検討することを提案したい。ジョブ型をCGコードの視点から見ることで、検討の難易度は上がるかもしれないが、議論もより深まり、自社に最適な人事制度設計と運用方法を構築する機会になるのではないだろうか。

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経営コンサルティング第二部
主任コンサルタント 小林 一樹