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スピンオフについて考える

~「人的資本」に影響を与える事業再編とは~

2022年01月17日

経営コンサルティング第一部 主任コンサルタント 真木 和久

最近、スピンオフについて、相談を受ける事例が、少しずつ出てきた。そもそもスピンオフとは何だろうか。

スピンオフとは、社内の事業部門を切り出し、独立させることであり、切り出した後も株主(または親会社)との資本関係は継続(子会社化)するものである。

スキームとしては、下記のような手法が考えられる。
①A社がB事業を分社化し、B社をA社の子会社とする。
②B社株式をA社株主に現物配当する。
③結果として、A社株主は、A社株式・B社株式両方を保有。

スピンオフの目的としては、社内の一事業として置いておくよりも、切り出すことで事業の成長や、事業価値の向上につなげること等が考えられる。

スピンオフのメリットとして、コングロマリットディスカウント(同じ業種の専業企業に比べて、多角化している企業の企業価値がマーケットにおいて低く評価されていること)の解消等が挙げられる。

スピンオフ税制の整備(2017年)や、「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」(経済産業省)の公表(2020年)により、事業ポートフォリオ経営の重要性への認識が高まり、スピンオフが注目されるようになってきた。

上場企業においては、コシダカホールディングス(コシダカHD)が、スピンオフ税制適用の第一号となった。カラオケ事業等を主体とするコシダカHDは、社内事業であるスポーツクラブ「カーブス」のスピンオフを実施した。カラオケ事業等とスポーツクラブ事業間に、明確なシナジーは見いだせないことが、背景にあったと考えられる。スピンオフにより、コシダカHDの株主は、カーブスホールディングス(カーブスHD)の株式を受け取ることとなった。

現状、東芝においても、インフラ・ビルを担当する「インフラサービス会社」と、パワー半導体やHDDを担当する「デバイス会社」、半導体メモリー大手のキオクシア株式や上場子会社の東芝テック株式を保有する「東芝」の3社に分かれることが検討されている。実現すれば、本邦初のコングロマリットのスピンオフ事例となる。

スピンオフは、欧米企業では珍しいものではない。イーベイによるペイパルのスピンオフは有名であるが、最近、GEがスピンオフにより会社を航空機エンジン、電力、医療機器の3事業に分割することを公表した。税制等制度が整ったことにより、日本でも、今後、事例が増えていくものと思われる。

スピンオフといえども、事業再編の一類型であり、留意すべき事項は、他の事業再編と変わらない。その目的を明確にし、メリットを享受できるように、組織・機能・ガバナンス等を整えていく。ビジネス面の検討の他に、法務・会計・税務・人事・システム面の検討も欠かせない。そして、スピンオフを成功させるために、最も重要と考えるのが、グループ経営及び個別事業経営をどう運営していくかである。これは単に組織の問題にとどまらず、突き詰めると、経営者等マネジメント層を中心とした「人的資本」をどうするかということになる。

スピンオフを含む事業再編を意義あるものにし、その効果を確実に得ていくために、豊富な知見を有する、外部の第三者機関であるコンサルティング会社の活用は、非常に有効な手段となる。

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真木 和久

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