2021年12月07日
2021年9月末に、金融庁は「バーゼルⅢの最終規則」を踏まえ、銀行等の自己資本比率規制の大幅な見直し案を公表した。適用時期は、国際統一基準行については2023年3月期とした一方、主な国内基準行については、1年延期し、2024年3月期とすることが認められる。
この主な国内基準行の適用時期について、11月末に、金融庁がさらに1年延期し、2025年3月期とする方針を固めた旨報じられた(※1)。
足元では、地域金融機関には、コロナ禍で打撃を受けた地域企業への支援が求められている。このような中で自己資本比率規制の大幅な見直しが適用されれば、業務やシステムを変更する必要があるが、十分な人員を抱えていない地域金融機関には大きな負担となり、資金繰り支援の業務が滞ってしまう恐れがある。そのため、地域金融機関への適用時期をさらに1年延期することが必要との考え方は理解できる。地域銀行を含め、信用金庫や信用組合などの国内基準が適用される地域金融機関は、適用時期が報道のようにさらに1年延期されるか注視する必要がある。
企業の資金繰り支援に関して、自己資本比率規制の見直し案の内容面では、延滞エクスポージャーに貸出条件緩和債権が追加された点に注意が必要である。貸出条件緩和債権とは、経営状況が悪化した債務者から債権を回収するため、債務者に有利な条件変更を行った貸出債権を指し、例えば借り手に対して貸出の元本や利息の返済を猶予した債権が該当し得る。延滞エクスポージャーは通常の債権よりリスク・ウェイトが引き上げられる場合があるため、見直し後は、貸出条件緩和債権が増加すれば自己資本比率が低下する恐れがある。地域金融機関はそれを避けようと、借り手に対して返済を猶予することをためらうかもしれない。
ただし、この点に関してはコロナ禍以前から、一定の場合に、借り手に対して返済を猶予しつつ、その貸出を貸出条件緩和債権としない扱いが認められている。具体的には、金融機関が返済猶予等の貸出条件の変更を行ったとしても、借り手が実現可能性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)を策定した場合、その貸出金を貸出条件緩和債権としなくてよい。借り手が中小企業の場合は、実抜計画が策定されていなくても、1年以内に策定する見込みがある場合は、貸出を貸出条件緩和債権と扱わなくてよい。
2021年9月には、この扱いについて柔軟な取扱いを認めることが明らかにされた。例えば、従前の扱いでは、中小企業の場合は実抜計画が1年以内に策定される見込みが必要だが、見直し後は1年間に限らず実抜計画の策定を猶予でき、また、事業規模の大小にかかわらず、このような柔軟な扱いが認められることとされた。
コロナ禍以前から経営が悪化していた企業にも資金繰り支援を行うべきか議論はあるが、地域金融機関はこの扱いを踏まえ、必要な場合には返済猶予等を通じて企業の資金繰り支援を行うことを検討すべきだろう。
(※1)2021年11月28日付日本経済新聞「地銀資本規制、適用を延期 金融庁、コロナ対応優先」
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 金本 悠希
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