隗より始めるカーボンニュートラル

~ はじめの一歩 代替肉を選んでみる ~

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2021年11月29日

  • マネジメントコンサルティング部 主席コンサルタント 弘中 秀之

脱炭素社会の実現に向けた動きが加速している。

政府より「2050年カーボンニュートラル」、「2030年度の温室効果ガス削減目標2013年度比46%減」等が宣言され対策は急務であるが、既存対策の延長線上に目標達成の道筋はない。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいても、気候変動への対策を含むサステナビリティが重視されている。今後脱炭素シフトが進み、事業環境の前提が大きく変化していく中、10年先の存続が危ぶまれる企業も少なくないのではないか。

このような世の中の動きの中、各個人においても脱炭素を自分事として捉え、行動していくことが重要であることは間違いない。翻って、自らを省みると、胸を張れる行動を実践できていない。もちろん、こまめに電気を消す、車を使わず徒歩や公共交通機関の利用を優先する等は意識しているつもりだ。しかし、これらは昔からよく言われていたことであり、カーボンニュートラル達成のための新たな取り組みとは言えない。

そこで何をすべきかを考える中で、今普及しつつある代替肉のポテンシャルの高さに注目した。肉類は飼料の生産・輸送に伴うCO2排出に加え、家畜の消化器からのメタン(CH4)発生等により、消費量に対して温室効果ガス排出量が多い*1と言われている。日々の食材を見直すことは、個人で継続的に行える点でも良さそうだ。

代替肉には、二つの種類がある。ひとつは、大豆等の植物を使用し、肉の触感と風味付けを行うものだ。現在、ファーストフードや高級レストランも含め、急速に利用が広がっている。実際ハンバーガーを食べてみたが味は申し分ない。もうひとつが、培養肉である。これは、動物の肉の細胞を培養し食肉に育てるものだ。まだ国内では商品として販売されているものはないが今注目されている分野である。

この培養肉の製造にチャレンジしているスタートアップ企業であるダイバースファーム株式会社の代表取締役大野次郎氏に話を聞く機会を得た。

「当社では培養肉を作る技術は確立している。今後はコストダウンと量産が課題」「日本で認められていない培養肉の製造販売の許可取得も大きなハードル。シンガポールでは2020年に条件付きであるが認可*2された。イスラエルや米国も量産準備を進める企業があり2022年にも許可がでる見通しと聞く。食は日本が得意とするところであり、国からの積極的な関与を期待したい」とのこと。現在、共同創業者でミシュランシェフでもある島村雅晴氏と一緒に商品化に向け取り組んでいる。

残念ながら許可前であるため試食はできなかったが、1センチ四方の一枚の培養肉を焼いてもらった。匂いは普通の肉と変わらない香ばしいものであった。今後、上市できれば、当初は多少の抵抗感を持つ人はいるかもしれないが、食卓に浸透していく可能性を感じることができた。

「未来は予測できないものであるが、既に起こっている予測可能な未来がある」旨を、ピーター・F・ドラッカーは述べている。培養肉を含め代替肉には、温室効果ガスの削減の他、動物の命を奪う必要がないという観点もある。代替肉へのシフトは、既に起こっている予測可能な方の未来だと私は考える。

世の中で脱炭素シフトが進む中、今後個人が商品等を選ぶ際に、その選択が脱炭素に繋がるかという判断を迫られる機会が増えてくる。また、カーボンニュートラルを本当に実現するためには、個人があらゆる生活行動を主体的に脱炭素と結び付けて考えることが必要になってくるだろう。ささやかな取り組みかもしれないが、まずは代替肉を積極的に選ぶことから始めてみたい。

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弘中 秀之
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マネジメントコンサルティング部

主席コンサルタント 弘中 秀之